【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(17)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
③ 無職者
ウ 高齢者
就労の蓋然性があれば,賃金センサス第1の産業計,企業規模計,学歴計,男女別,年齢別平均の賃金額を基礎とします。
<裁判例>
・ 一人暮らしの無職者(女・74歳)につき,農作業や仕出し屋でアルバイトとして働くこともあったこと,就労の意思も能力もあったことから,就労の蓋然性を認め,賃金センサス女性学歴計65歳以上平均を,就労の機会及び得られる収入が少ないことを考慮して5割減じて基礎とし,生活費控除率50%で7年間認めた。
(2)年金収入・恩給収入
高齢者の死亡逸失利益については,年金の逸失利益性が問題となります。
① 年金収入・恩給収入につき逸失利益性を肯定した事例
・ 国民年金(老齢年金)
・ 国民年金の振替加算額
・ 老齢厚生年金
・ 農業者年金(経営移譲年金及び農業者老齢年金)
・ 地方公務員,国家公務員の退職年金給付
・ 港湾労働者年金
・ 恩給
・ 国民年金法に基づく障害基礎年金のうち子の加給分を除いた本人分,厚生年金保険法に基づく障害厚生年金のうち妻の加給分を除いた本人分を逸失利益として肯定した。
・ 労働者災害補償法に基づく障害補償年金及び障害特別年金を本件事故の20年以上前から受給していたタクシー運転手につき,稼働収入喪失分とともに,両年金の受給権喪失分を認めた。
・ 私学共済年金(退職年金)及び亡夫の遺族年金の受給資格を有していたが,どちらか一方しか受給できなかったため,金額的に有利な遺族年金を選択していた年金受給者につき,私学共済金の逸失利益性を認め,平均余命の約半分の13年間は稼働収入分を加え,平均余命の25年間,私学共済年金を基礎とした。
・ 事故の約3ヶ月後に定年退職予定の大学教授につき,稼働分について賃金センサス男性大卒・大学院卒年齢別平均賃金を基礎収入として生活費控除率は40%として逸失利益を認めたうえ,既に受給が確定していた老齢基礎年金及び私学共済年金の合計を基礎に,平均余命までの19年間,生活費控除率50%で認めた。
・ 茶商につき,労働収入分については,事故前の被害者の所得とその妻の給与の合計額を基礎に生活費控除率40%,酒楼可能年数を1年とし,年金分については,国民年金と陸軍軍人普通恩給の受給額を基礎に生活費控除率を60%として3年間認めた。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。