【コラム】:物損(7)

2025-04-11

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,車の修理代金や代車使用料などの物損もあります。
 なお,自賠責保険は人身事故のみ対象としており,物損事故による損害は対象外となるため,物損事故による損害は,加害者または加害者が加入している保険会社に請求することになります。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

3.買替差額
(2)車両時価の算定例(2)
・ 98年式ハーレーダビッドソン誕生95周年限定記念モデル(生産台数3000台)につき,購入額100万円以上の損害を認定することは,所有している物の客観的価値を回復させるという点で,原状回復以上の利益を与えることにならないとして,時価額230万円を損害額とした。
・ 新車登録後10年2か月,累計走行距離約139万kmのトラクタにつき,原告会社で稼働中の46台中,新車登録後12年以上の車両が12台あり,うち3台は15年以上経過していること,被害車両の累計走行距離を超える車両は8台あり,15年以上経過している車両の累計走行距離はすべて175万kmを超えていることから,耐用年数を法定の5年ではなく,15年として,購入価格1296万円に定率法による残価率0,215を乗じた278万6400円を車両時価額とした。
・ メーカーオプション付きのレクサスRXについて,メーカーオプションは,車両の価値向上に資するオプションで,かつ容易に他の車両に転用が効くものではないことから,その価格は,車両時価額に加算して計算すべきとした上で,メーカーオプションによる価値の増加も,車両本体と同様に購入価格から2割を減価した8割に限定されるとして,車両本体の時価額524万4000円にメーカーオプション分26万0400円を合算した金額を時価額とした。
・ カーボンフレーム等が損傷したスポーツバイクの自転車(2年前に58万9000円で購入)につき,時価は,適当な中古市場がないため減価償却の方法で算定するほかなく,スポーツバイクとして負荷のかかる使用が予定されている一方,用途に応じた耐久性を備えていることに鑑み,耐用年数を5年として減価償却した42万4080円とし,修理費用(66万0588円)が時価を上回るとして,経済的全損とした。
・ 初年度登録後10年,走行距離15万4700kmの洋型霊柩車につき,特殊用途の車両は,中古車市場に多数流通しているわけではないため,取得価格から一定の方法で減価して時価を把握する方法によることもやむを得ないとし,ベース車両(トヨタ・クラウンエステート)の新車価格367万5000円に改造費用412万2500円を加えた779万7500円を新車価格とした上で,ベース車両のレッドブックに基づく減価率約71%を控除した226万1275円から走行距離による減価をした195万1275円を認めた。
・ 事故に先立つ10日前に有効期間1年の車検を受けた事業用中型貨物自動車(冷凍車,初年度登録後16年,走行距離92万km)の経済的全損の事例について,車両時価額101万円(新車価格の10%)のほか,残存車検期間に相当する車検整備費用49万9059円について相当因果関係ある損害とした。
・ スバル・ディアスワゴンの車両時価の算定について,レッドブック掲載価格の42万円を基本として,同書の加減評価参考値において,車検の有効期限が4か月未満の場合3万5000円を,走行距離が約11万km,初年度登録から120か月以上経過している場合には7万円をそれぞれ控除することになっていることから,車両損害額を31万5000円と認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,6年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 物損事故の場合,被害者の加入している車両保険を使用して解決する方もいらっしゃいますが,等級が下がり翌年からの掛け金が高くなります。被害車両の損害状況や過失割合によっては車両保険の使用をお勧めすることもありますが,弁護士費用特約を使用し,弁護士が加害者と交渉することで,適正な賠償額を回収することができます。弁護士費用特約は使用しても等級が変わらず,翌年からの保険料も変わりません。
 弁護士法人しまかぜ法律事務所は物損の解決実績も多くありますので,車両保険を使用して高くなった保険料を払うか,弁護士費用特約を使用して保険料が変わらずに解決できるか,ぜひ,一度ご相談ください。

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