【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(30)

2022-07-15

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(30)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(6)RSD(CRPS)等の疼痛傷害
  ② 自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例
   ・ アルバイト(固定時38歳)の右上肢の疼痛,知覚低下,しびれ等の症状(労災9級,自賠責14級)につき,RSDとの確定診断は困難としつつ,症状と事故との因果関係を肯定し,15年間30%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 看護師(固定し34歳)の右膝痛,右膝の異常知覚等(自賠責非該当)につき,これらの症状がRSDであると認め,少なくとも局部に頑固な神経症状を残すもの(12級)に該当するとして,10年間14%,その後10年間10%の労働能力喪失を認めた。
   ・ システムエンジニア(固定時36歳)の左上肢のRSD(12級)につき,かなりの頻度で治療を受け,1回の治療において5ヶ所に局部麻酔を注射しなければ効果を期待できない状況にあり,軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛であるとして,31年間56%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 中国出身・中華料理店経営者(固定時43歳,自賠責12級)につき,左肩・左手関節拘縮などのRSD症状やその疼痛が影響して左肩関節及び左手関節に健側と比べて明らかな可動域制限が認められることから10級10号に相当するとし,24年間27%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 被害者(固定時39歳)の右腕の症状(14級)につき,右肘にむくみ及び激しい痛みがあり,右肘の曲げ伸ばしが困難となり,筋力が低下し,上腕骨骨頭内側萎縮壊死が認められること等から,RSDであるとし,痛みによって制約されている生活ないし仕事の状況に鑑み,9級10号に該当するとして,28年間35%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 有職主婦(固定時29歳)の頸部から左上肢にかけて残存する神経症状(自賠責12級)等につき,CRPS(RSD)の診断基準等を満たしていること,ギボンズのRSDスコア表も基準以上であること,複数の医師がRSD・CRPSに罹患したとの診断をしていること等から,10級程度のRSD・CRPSと認定し,38年間27%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 調理師(固定時39歳)の右膝等の疼痛,左上肢等のしびれ(自賠責それぞれ14級)につき,右膝の疼痛はカウザルギーとは認められず,自賠法施行令上のCRPSとは認められないが,日本版CPRS判定指標は満たす旨の専門的知見があったこと等から,12級13号と認定し,左上肢等のしびれについても12級13号と認定して併合11級としたうえで,28年間20%の労働能力喪失を認めた。
   ・ 土木工事業(固定時46歳)の右上肢の障害(自賠責10級)につき,自賠責保険が定める要件を含めCRPSタイプⅠ(RSD)の発症を基礎づける所見があるとして,右上肢CRPSタイプⅠ(RSD9級)と認定し,頸部の神経症状(14級)と併せて9級としたうえで,21年間35%のい労働能力喪失を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 CRPS(RSD,カウザルギー)は,猛烈な痛みの伴う難治性の後遺症です。また慢性化することで精神的にも追い込まれることは少なくありません。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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