【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(22)

2022-05-09

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(22)
8.神経系統の機能又は精神の障害
(1)遷延性意識障害(いわゆる植物状態)
 遷延性意識障害とは,重傷を負い,意識不明のまま寝たきりになっている状態のことで,一般的に植物状態と言われているものです。遷延性意識障害は,交通事故の後遺症の中でも,最も重篤な後遺症だと言われています。
 遷延性意識障害の定義については,日本脳神経外科学会による定義(1976年)が一般的で,以下の6項目が医療によっても改善されずに3ヶ月以上続いた場合を遷延性意識障害といいます。
 1 自力移動ができない。
 2 自力摂食ができない。
 3 し尿失禁がある。
 4 声を出しても意味のある発語ができない。
 5 簡単な命令には辛うじて応じることもできるが,意思疎通はほとんどできない。
 6 眼球は動いていても認識することはできない。
 遷延性意識障害になると常に介護を要するため,通常は後遺症等級1級が認定されることになります。
 しかしながら,CT画像,MRI画像,医師が診察して作成した後遺障害診断書などの適切な資料を用意しないと,適正な等級認定がされないこともありますので注意が必要です。

 <認定例>
  ・ 大学生(固定時22歳)の脳挫傷による植物状態(1級3号)につき,22歳男性の平均余命と認定し,22歳から67歳まで100%の労働能力喪失を認め,かつ生活費控除もしなかった。
・ 小学生(固定時8歳)の遷延性意識障害,射幹・四肢の運動麻痺等(1級3号)につき,8歳男性の平均余命と認定し,18歳から67歳まで100%の労働能力喪失を認め,かつ生活費控除もしなかった。
・ 男児(固定時3歳)の遷延性意識障害(別表1の1級1号)につき,3歳男子の平均余命と認定し,18歳から67歳まで100%の労働能力喪失を認め,かつ生活費控除もしなかった。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 遷延性意識障害になると常に身守りや介護が必要になりますので,遷延性意識障害の患者が暮らしやすい環境を整えるには,適正な後遺症の等級認定を受け,適正な賠償金を得ることが大切です。
 逸失利益は賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な逸失利益を算定するためにも,ぜひ,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ご相談ください。

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