【コラム】:慰謝料(37)

2024-10-11

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

4 損害算定困難等を慰謝料で斟酌した事例
(3)逸失利益の算定が困難または不可能な場合
  ① 労働能力喪失が認められないとされた事例
   ウ 嗅覚障害
・ 大学生(事故時31歳,嗅覚障害12級相当,顔面醜状14級の併合12級)につき,逸失利益が認められないことを考慮し,600万円を認めた。

エ 骨盤骨変形
 ・ 臨時職員(23歳,骨盤骨の著しい奇形12級,右足外側にケロイド状線状痕14級,右足神経症状14級の併合12級)につき,就労能力に特段の影響がないとして逸失利益としては考慮せず,傷害分160万円,後遺障害分300万円を認めた。
・ 公務員(24歳,骨盤変形12級等)につき,現実の減収がなく逸失利益を認め難いが,職場での不自由,昇格面や長期的将来における不安等を考慮し,600万円を認めた。

オ 生殖器の障害
 ・ 派遣会社員(25歳,生殖機能障害11級,右手関節障害12級の併合10級)につき,生殖機能障害が逸失利益に反映されない点を考慮して,560万円を認めた。
・ 美術講師(31歳,腰部以下の運動障害9級,脊柱変形11級,左腎萎縮7級,骨盤骨変形12級の併合6級)につき,婚姻生活の制限を強いることが予想されるとして,傷害分を含む慰謝料総額3296万円を認めた。
・ 兼業主婦(固定時37歳,生殖器の障害11級相当,左股関節痛12級,左大腿部の知覚障害,左下肢の知覚障害感覚障害等12級の併合10級)につき,自然分娩が困難となり,出産時に帝王切開を余儀なくされることから将来の不安が大きいことを考慮して600万円を認めた。
・ 会社員(固定時22歳,生殖器の障害11級を含め12級以上の後遺障害が5つ併存し,併合10級相当)につき,左大腿前面の瘢痕等,複数の広範な瘢痕が残存していること,骨盤骨折に伴う生殖器障害により長期間にわたり相当の心労を重ねていた上,第1子の出産にあたり帝王切開を余儀なくされ,第2子以降についても同様であること等から相応の増額が必要であるとして,傷害分265万円のほか,後遺障害分850万円を認めた。

カ 目・耳・鼻・口の障害
 ・ パート主婦(固定時46歳,精神神経障害9級,顔面醜状12級,言語障害10級,眼瞼障害12級,聴力障害14級相当の併合8級)につき,顔面醜状,言語障害,眼瞼障害,耳鳴りは労働能力への直接的な影響を与えていないとして労働能力35%で67歳まで逸失利益を認め,後遺障害慰謝料として1300万円を認めた。

② 現実の減収がないとされた事例
 ・ 開業医(右手指のしびれ等14級)につき,開業医としての減収がなく逸失利益が認められないことを斟酌し,200万円を認めた。
 ・ 刑務官(頸部痛等14級,腰痛等14級の併合14級)につき,事故後給料面で格別不利益な取り扱いを受けていないことから後遺障害逸失利益を否定し,傷害分135万円のほか,後遺障害分150万円を認めた。
 ・ 公務員・給食調理員(45歳,歯牙障害非該当,右膝痛等14級)につき,前歯が抜けた状態となり,インプラント治療を余儀なくされたこと,検食の際に食材等を細かく刻むなどの手間を要したこと,歯牙障害,右膝痛等が逸失利益に反映されないことなどを考慮し,傷害分183万円余りのほか,後遺障害分240万円を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,5年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 後遺症は1つ等級が上がるだけで大きく賠償額が変わります。適正な等級認定を獲得するには,できるだけ早い段階から情報を入手して,準備を進めることが大切になります。
 後遺症申請の認定実績が多数あり,適正な後遺症慰謝料での解決している,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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