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【コラム】:認知症患者による交通事故
内閣府「平成29年度高齢者白書」によると,2012年は認知症患者数が約460万人,高齢者人口の15%という割合だったものが,2025年には5人に1人,20%が認知症になるという推計が出ています。
(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/zenbun/29pdf_index.html)
認知症とは,何らかの病気や障害などの様々な原因によって,記憶や判断などを行う脳の機能(認知機能)が低下し,日常生活や仕事に支障をきたすようになった状態のことをいいます。一般的には高齢者に多い病気といわれていますが,年齢に関わらず発症する可能性があります。
では,認知症の方が交通事故を起こしたらどうなるのでしょうか。
1.認知症患者が加害者の場合
(1)被害者に対する補償
加害者が認知症であっても,加害者が任意保険に加入していれば,被害者に対する対人対物保険は使用できますので,治療費,慰謝料,修理費などすべて補償されます。
任意保険が切れていた場合,任意保険の対象者が認知症患者を含んでいない場合は,任意保険は対象外となりますので,自賠責保険の範囲内で補償されます。
自賠責保険は,加害者本人だけでなく,車の所有者も責任を負いますので,車の所有者が息子であった場合,運行供用者責任として息子も責任を負います(自賠法3条)。被害者の症状にもよりますが,後遺障害が認定されるような大事故の場合は,何千万円という賠償責任を車の所有者である息子が負担することになります。
運行供用者責任(自賠法3条)を回避するには,
①自己(運行供用者)及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと
②「被害者」又は「運転者以外の第三者」に故意又は過失があったこと
③自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと
を証明する必要があります。
責任無能力者の責任を否定する民法713条は、運行供用者責任には適用されませんので(東京地裁平成25年3月7日判決),仮に,加害者が認知症患者で責任能力がないと認定されても、加害者側が上の免責3要件を立証できない限り、運行供用者責任(自賠法3条)を免れることはできません。
(2)加害者自身に対する補償
認知症である自分に対する人身傷害保険(自分の治療費や慰謝料など),車両保険(自分の車の修理費)は,認知症の症状や保険会社によって対応が異なりますが,補償されない可能性が高いです。
まず,約款に,保険金を支払わない場合として,「被保険者の脳疾患,疾病または心神喪失によって生じた損害」と記載されている場合は,補償されません。
もし,上記の内容が記載されていなくても,「故意または重大な過失がある場合」は保険金を支払わないという内容が適用され,補償されない場合があります。これは,認知症の診断を受けていて,誰が見ても運転したら危険性だとわかる状態なのに運転をして事故を起こしたのは,「重大な過失」と考えられるためです。
(3)過失割合
認知症の程度によっては,事故状況の確認が難しく,事故の目撃者がいない場合は,示談による解決が難しくなることもあります。
適正な過失割合で事故の解決をするには,ドライブレコーダーや事故現場周辺の防犯カメラ,事故の現場図等を分析し,正確な事故態様を明らかにする必要があります。
賠償額が大きくなればなるほど,過失割合がたとえ1割の違いであっても,受け取れる金額が大きく変わってきますので,適正な過失割合で事故の解決をすることが大切です。
2.事故がきっかけで被害者が認知症(高次脳機能障害)になった場合
交通事故によって脳が損傷することで,認知症(高次脳機能障害)を発症することがあります。認知症と高次脳機能障害は症状が似ているため,認知症なのか,高次脳機能障害なのか,もしくは,認知症と高次脳機能障害を併発しているのか,医療機関で正確な診断を受ける必要があります。
後遺障害が認定されれば,後遺障害慰謝料,逸失利益(生きていれば得られるはずであった収入など,交通事故によって失われた利益のこと)を請求できます。
高次脳機能障害の後遺障害は,症状に応じて1級~9級が認定されますが,後遺障害慰謝料は,1級(常に介護を要するもの)で2800万円,9級(労務が相当な程度に制限されるもの)で690万円となります。
逸失利益は,被害者の年収や年齢によって異なってきます。特に,事故前年の年収が高い方,就労可能年数(67歳)までの年数が長い方の逸失利益は高額となります。
逸失利益は,一般的に,賠償項目でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で算定することが大切です。
弁護士法人しまかぜ法律事務所は,認知症患者の交通事故や高次脳機能障害の解決実績が豊富にありますので,適正な賠償額で解決するためにも,ぜひ,ご相談ください。
【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(17)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
③ 無職者
ウ 高齢者
就労の蓋然性があれば,賃金センサス第1の産業計,企業規模計,学歴計,男女別,年齢別平均の賃金額を基礎とします。
<裁判例>
・ 一人暮らしの無職者(女・74歳)につき,農作業や仕出し屋でアルバイトとして働くこともあったこと,就労の意思も能力もあったことから,就労の蓋然性を認め,賃金センサス女性学歴計65歳以上平均を,就労の機会及び得られる収入が少ないことを考慮して5割減じて基礎とし,生活費控除率50%で7年間認めた。
(2)年金収入・恩給収入
高齢者の死亡逸失利益については,年金の逸失利益性が問題となります。
① 年金収入・恩給収入につき逸失利益性を肯定した事例
・ 国民年金(老齢年金)
・ 国民年金の振替加算額
・ 老齢厚生年金
・ 農業者年金(経営移譲年金及び農業者老齢年金)
・ 地方公務員,国家公務員の退職年金給付
・ 港湾労働者年金
・ 恩給
・ 国民年金法に基づく障害基礎年金のうち子の加給分を除いた本人分,厚生年金保険法に基づく障害厚生年金のうち妻の加給分を除いた本人分を逸失利益として肯定した。
・ 労働者災害補償法に基づく障害補償年金及び障害特別年金を本件事故の20年以上前から受給していたタクシー運転手につき,稼働収入喪失分とともに,両年金の受給権喪失分を認めた。
・ 私学共済年金(退職年金)及び亡夫の遺族年金の受給資格を有していたが,どちらか一方しか受給できなかったため,金額的に有利な遺族年金を選択していた年金受給者につき,私学共済金の逸失利益性を認め,平均余命の約半分の13年間は稼働収入分を加え,平均余命の25年間,私学共済年金を基礎とした。
・ 事故の約3ヶ月後に定年退職予定の大学教授につき,稼働分について賃金センサス男性大卒・大学院卒年齢別平均賃金を基礎収入として生活費控除率は40%として逸失利益を認めたうえ,既に受給が確定していた老齢基礎年金及び私学共済年金の合計を基礎に,平均余命までの19年間,生活費控除率50%で認めた。
・ 茶商につき,労働収入分については,事故前の被害者の所得とその妻の給与の合計額を基礎に生活費控除率40%,酒楼可能年数を1年とし,年金分については,国民年金と陸軍軍人普通恩給の受給額を基礎に生活費控除率を60%として3年間認めた。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。
【コラム】:7月は四輪車,二輪車の死亡事故が多発
愛知県警察が作成している「交通事故防止のPOINT」によると,過去5年の四輪車・二輪車の月別死者数は7月が最多となっています。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/documents/202307point.pdf
事故類型別でみると,速度超過による単独事故が多くなっています。
また,7月は飲酒運転による死亡事故が増えています。アルコールは,中枢神経系に作用して脳の神経活動を抑制する物質で,運動機能,自制心,動体視力,集中力,認知能力,状況判断力の低下等を生じさせることから,交通事故を起こす危険が極めて高くなります。そのため,飲酒した運転手だけでなく,依頼同乗者,車両提供者,酒類提供者にも重たい罰則・行政処分が科せられます。
過失割合について,速度超過がある場合,おおむね時速15km以上30km未満の速度違反で著しい過失,おおむね時速30km以上で重過失の修正要素が適用されます。
速度違反した車両のドライブレコーダーに速度が表示されている場合もありますが,加害車両のドライブレコーダー映像を提供してもらえないこともあります。その場合は,被害車両のドライブレコーダー映像や事故現場付近の防犯カメラ等を解析し,速度を明らかにできる場合があります。
また,酒気帯び運転は著しい過失,酒酔い運転は重過失の修正要素が適用されます。加害車両の運転手に飲酒の疑いがある場合,警察で検査をしていれば,刑事記録等を取り寄せることで,飲酒の有無を明らかにできる場合があります。
著しい過失の場合は10%,重過失の場合は20%加算修正されます。
過失割合は,物損だけでなく人身にも影響しますので,死亡事故や後遺障害が残存する事故など,賠償額が大きくなればなるほど,過失割合がたとえ1割の違いであっても,受け取れる金額が大きく変わってきます。
弁護士法人しまかぜ法律事務所では,適正な過失割合で事故の解決をしていますので,過失割合でお困りの方は,ぜひ,ご相談ください。
【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(16)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
③ 無職者
イ 失業者
労働能力及び労働意欲があり,就労の蓋然性があるものは認められます。再就職によって得られるであろう収入を基礎とすべきで,その場合特段の事情のない限り失業前の収入を参考にします。ただし,失業以前の収入が平均賃金以下の場合には,平均賃金が得られる蓋然性があれば,男女別の賃金センサスによります。
<裁判例>
・ 高校卒業後勤務した会社を退職し,事故翌日からアルバイト開始予定だった18歳男子につき,高校卒業直後で将来どのような仕事に就くか分からない若者のため,統計を用いての確認方法をとらざるをえないが,それでも不確定な要素が余りにも多いため,かなり大きな範囲の統計的平均数値を用いるとした上で,賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎とした。
・ 税理士資格試験受験のため会計事務所を退職した直後の無職者(男・24歳)につき,賃金センサス男性大卒全年齢平均を基礎とした。
・ 無職者(男・32歳)につき,大学中退後の13ヶ月間に会社の技術職として342万円余の収入があり,その後番組制作・ビデオ制作アシスタントとして8ヶ月間に131万円余の収入を得た後も,職を変え,断続的に相当程度の収入を得ていたことから,賃金センサス男性高専短大卒全年齢平均を基礎とした。
・ 独身無職者(男・53歳)につき,過去に有職で妻帯していたこともあり,将来にわたって同じ状況が継続するものとは予想し難く,むしろ何らかの収入の途を得る蓋然性を否定できないとして,賃金センサス男性学歴計54歳平均を基礎に,生活費控除率60%で認めた。
・ 妻は独自に年金を受給し,子3名はいずれも独立している単身無職者(男・62歳)につき,裁判所職員として41年間勤続し,退職後大学院に入学して,大学院卒業後,就職活動を行っており,補外車の経歴及び就労意欲にかんがみれば就労の蓋然性が認められること,他方,大学院在学中から就職活動を行っていたものの卒業後約2ヶ月が経過しても具体的な就職の目処がたっていないこと,被害者の年齢や年金収入があったことから,賃金センサス男性学歴計60歳から64歳平均を基礎に,収入額及び年金収入額にかんがみ,生活費控除率40%で認めた。
・ 無職者(男・63歳)につき,過去の労災事故により労災等級7級相当の障害があり,事故当時無職であったが,事故の約2ヶ月前に疼痛改善の指摘があり,本人も仕事復帰に意欲を示していたこと等から,就労の蓋然性があったと認め,賃金センサス男性学歴計60歳から64歳の平均から一部喪失労働能力分として56%を減じた額を基礎とした。
・ 事故当時無職者(男・65歳)につき,事故の2ヶ月前まで40年間教職についており,退職後も求職活動を行っていたことや年齢から就労の意思と能力を認め,事故前年の収入282万円余を基礎に,生活費の相当部分は年金を充てる蓋然性を認め10年間生活費控除率40%で認めた。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。
【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(15)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
③ 無職者
ア 学生・生徒・幼児等(3)
女子年少者の逸失利益については,女性労働者の全年齢平均ではなく,全労働者(男女計)の全年齢平均賃金で算定するのが一般的です。
<裁判例>
(ア)全労働者(男女計)平均賃金を用いた裁判例
a 14歳の女子につき,賃金センサス全労働者学歴計全年齢平均を用いた一審判決を支持したが,男性とのバランスも考慮し,生活費控除率を40%から45%に変更した原審に対する上告を棄却するとともに,上告審として受理しないとした。
b 事故時11歳の女子につき,賃金センサス全労働者全年齢平均を用い生活費控除率を45%として算定した一審を支持した原審に対する上告受理申立に対し,上告審として受理しないとした。
c 生活費控除率を30%とした事例
事故時7歳の女子(東京地判平19年12月17日)
d 生活費控除率を40%とした事例
・事故時3歳の女子(名古屋地判平17年3月29日)
・事故時6歳の女子(東京地判平19年6月27日)
・事故時6歳の女子(さいたま地判平24年12月25日)
e 生活費控除率を45%とした事例(上記ab以外)
・事故時11歳の女子(東京地判平15年6月26日)
・事故時14歳の女子(大阪高半平19年6月27日)
・事故時15歳の女子(東京地判令3年12月17日)
・事故時12歳の女子(名古屋地判平21年12月2日)
・事故時8ヶ月の女子(大阪地判平23年3月11日)
・事故時5歳の女子(京都地判24年10月24日)
・事故時18歳の女子(短大生)(大阪地判平27年1月13日)
・事故時17歳の女子(高校生)(横浜地判平30年2月19日)
(イ)女性労働者の全年齢平均賃金を用いた裁判例
・事故時9歳の女子(最二小決平13年6月29日)
・事故時2歳の女子(最二小決平13年9月11日)
・事故時10歳の女子(最二小決平14年7月9日)
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。
【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(14)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
③ 無職者
ア 学生・生徒・幼児等(2)
<裁判例>
・ 短大2年生(男・20歳)につき,4年生大学への編入を希望しており,成績等からも事故に遭わなければ4年制大学に編入した蓋然性が高いとして,賃金センサス男性大卒全年齢平均を基礎とした。
・ 大学生(女・20歳)につき,賃金センサス男性大卒全年齢平均と同女性大卒全年齢平均の平均額で請求したのに対し,死亡年の女性大卒全年齢平均を基礎とした。
・ 海洋関係の研究をしていた大学生(女・20歳)につき,同大学の女性卒業生の多くが就職または大学院修士課程に進学し,修士課程を修了した女性卒業生の多くが就職または博士課程に進学していることから,賃金センサス男性大卒全年齢平均と同女性大卒全年齢平均との平均額を基礎に,生活費控除率40%で認めた。
・ 美容専門学校2年生(女・20歳)につき,被告の美容師の平均賃金に鑑みた高卒女性全年齢平均を基礎収入とすべきとの主張を,被害者が20歳で死亡しており今後の活躍の可能性を限定すべき特段の事情もなかったこと等を理由に排斥し,専門技術を生かした職業に従事していた可能性が高いこと等から,就職予定年の賃金センサス女性専門学校・短大卒全年齢平均を基礎とした。
・ 大学薬学部1年生(女・21歳)につき,高校生のころから薬剤師を希望していたこと,在籍する大学の国家試験の合格率が全国平均を上回っていたことから,大学卒業後に薬剤師として稼働する蓋然性が高かったとして,賃金センサス女性薬剤師企業規模計を基礎とし,生活費控除率30%で認めた。
・ 大学3年生(男・21歳)につき,教育学部数学専攻であり,教師を目指し,教育実習に行くことが決まっていたこと等から教師の職に就く蓋然性が高かったとして,賃金センサス教育,学習支援業・企業規模計・男性大卒全年齢平均を基礎とした。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。
【コラム】:「春の交通安全運動」期間中の交通事故死者 愛知県がワースト
警察庁によると,「春の全国交通安全運動」期間中(令和5年5月11日から20日)の交通事故死者数は65人でした。そのうち,愛知県は8人で,全国でワーストとなりました。
死者の状態別では自動車乗車中が16人,二輪車乗車中が8人,自転車乗車中が8人,歩行中が33人でした。年齢別では65歳以上が41人となっており,6割を超えています。
https://www.npa.go.jp/news/release/2023/20230522harukou.html
高齢者が交通死亡事故の被害に遭われた場合,損害賠償を請求する際に問題となるのが,死亡逸失利益(生きていれば得られるはずであった収入など,交通死亡事故によって失われた利益のこと)です。
高齢者といっても,仕事をされている方,家事従事者の方,年金を受給して生活されている方など様々な方がいますので,何を基準に死亡逸失利益を算定するかが争点になることが多くあります。
死亡逸失利益は,一般的に,死亡事故の賠償項目でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で算定することが非常に重要となります。
なお,定年退職直後や生活保護を受給していた等の理由で事故当時は無職であっても,再就職の意欲と蓋然性があれば,死亡逸失利益を請求することができる場合もあります。
また,交通事故で一命を取りとめたものの,一定期間,入院・通院した後に亡くなられる場合もあります。このように,入院・通院後に亡くなられた場合,治療費,葬儀費用,死亡逸失利益,慰謝料のほかに,入院・通院に伴う慰謝料等も当然に請求することができます。
なお,治療の結果,後遺障害が残り,その後事故とは別の理由で亡くなったとしても,死亡の事実は考慮せずに,事故後生存している場合と同様に後遺障害逸失利益は請求できます。
弁護士法人しまかぜ法律事務所は,高齢者の交通死亡事故の解決実績が豊富にありますので,適正な賠償額で解決するためにも,ぜひ,ご相談ください。
【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(13)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
③ 無職者
ア 学生・生徒・幼児等
学生・生徒・幼児等の基礎収入は,賃金センサス第1巻第1表の産業計,企業規模計,学歴計,男女別全年齢平均を基礎とします。
なお,大学生になっていない者についても,大卒の賃金センサスが基礎収入と認められる場合があります。ただし,大卒の賃金センサスによる場合,就労の始期が大学卒業予定時となるため,全体として損害額が学歴計平均額を使用する場合と比べると減ることがあります。
<裁判例>
・ 賃金センサスは,事故時のものではなく最新のものを用いた。
・ 音楽大学の附属高校に通学中の高校生(女・15歳)につき,同校の学生の8~9割が音楽大学に入学しており,被害者もまた音楽関係の仕事に就業した蓋然性が高いこと,バイオリン演奏について専門的な技術を有し,このような職種は男女格差が認められないなどを考慮し,賃金センサス男性大卒全年齢平均の9割を基礎(生活費控除率35%)とした。
・ 2人の高校生(男・16歳と15歳)につき,男性学歴計全年齢平均を得られないと認めるに足る特段の事情がない限り,同平均賃金を基礎収入として逸失利益を算定するのが相当であるとしたうえで,特段の事情は認められないとして,18歳から67歳まで同平均を基礎とした。
・ 高校2年生(男・17歳)につき,高校1年時の成績は優れていなかったが,勉学に対する意欲があり大学へ進学するのを当然とする家庭環境(両親大学卒,姉2人も国立大学卒)にあって,両親及び本人も大学進学を希望していたことから,大学に進学した蓋然性が高いとして,賃金センサス男性大卒全年齢平均を基礎とした。
・ 家族が経営する会社の手伝いをしていた男性(17歳)につき,高校を1年時の1学期で中退し,翌年ころから本件事故当時まで会社の手伝いをしていたが,無給であったものの,会社創業者の孫であり,18歳ころに会社に就職することが見込まれていたとして,賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎とした。
・ 高校生(女・17歳)につき,中高一貫の進学校に在籍し,学業優秀であるのみならず,高校2年生の卒業式で代表して送辞を述べ,具体的に大学進学を希望していたこと等から,大学進学の蓋然性があるとし,また,今後50年程度,性差による賃金格差が維持されると予想することに合理性は見いだせないとして,賃金センサス全労働者大卒全年齢平均を基礎とし,生活費控除率45%で認めた。
・ 看護専門学校生(女・18歳)につき,卒業前は事故前年度のアルバイト収入,卒業後は賃金センサス女性看護師企業規模計全年齢平均を基礎として,生活費控除率30%で認めた。
・ 聴覚障害で身体障害者2級の大学生(男・18歳)につき,その労働能力は若年の聴覚障害者の中では最良に近い者と評価することが相当であるとし,他方で就ける職種が限られるという意味で,職業選択の幅に一定の制約があることを指摘せざるを得ない等として,賃金センサス男性大卒全年齢平均の90%を基礎とし,生活費控除率を50%として認めた。
・ 大学生(女・19歳)につき,大卒男性労働者の全年齢平均賃金と大卒女性労働者の全年齢平均賃金の平均値(生活控除率40%)を基礎とした。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。
【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(12)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
② 家事従事者(3)
<裁判例>
・ 女性(80歳)につき,家計の管理を専ら一人でしていたほか,入院と自宅での生活を繰り返していた夫の身の回りの世話をしていたとして,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎に,生活費控除率を40%として5年間認めた。
・ 夫と二人暮らしをしていた女性(80歳)につき,農業に従事していた他,家事一切を負担していたとして,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎に,生活費控除率30%として,6年間認めた。
・ 女性(81歳)につき,同居の孫(自律神経失調症によち就業困難・要生活支援)のため家事労働をしていたと推認できるから,高齢であり持病の治療を受けていたこと,約2年前の交通事故で12級8号の認定を受けていたこと等を考慮に入れても平均的な主婦の半分程度の逸失利益は認めるべきであるとして,賃金センサス女性学歴計全年齢平均の半額を基礎に,生活費控除率30%で5年間認めた。
・ 男性(82歳)につき,料理と洗濯の他,パーキンソン病に罹っている妻の看護,世話を行っており,同年齢の家事従事者より家事の量が多いことから,賃金センサス女性学歴計全年齢平均70%を基礎とした。
・ 夫と二人暮らしの女性(85歳)につき,高齢であったことや,その夫も既に退職し,自分の身の回りのことを行っていた部分もあることを総合考慮し,賃金センサス女性学歴計全年齢平均70%を基礎とした。
・ 歩行器を使用しての歩行も困難な妻(事故後約1年8ヶ月後死亡)の介護を行いながら家事全般を担っていた男性(85歳)につき,本件事故時に妻の死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情はないとして,労働能力喪失期間を平均余命の2分の1である3年とし,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎に,生活費控除率40%とした。
・ 近所の老人ホームに入所していた夫の身の回りの世話をしながら単身で生活していた女性(88歳)につき,家事従事者と認め,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均の80%を基礎に,3年間,生活費控除率30%を認めた。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。
【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(11)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その3 死亡による逸失利益
2.基礎収入
(1)稼働収入
② 家事従事者(2)
<裁判例>
・ 年金受給者(男性・71歳)につき,就労の蓋然性があるとはいえないとしつつ,家事を一定程度担っていたとして,就労可能年数7年につき年金収入を含めて賃金センサス女性全年齢平均の8割を基礎に,生活費控除率40%で認めた。
・ 夫と二人暮らしの女性(71歳)につき,賃金センサス女性70歳以上平均を基礎に,9年間認めた。
・ 近い将来長男家族と同居予定だった女性(72歳)につき,賃金センサス女性65歳以上平均を基礎に,平均余命の2分の1認めた。
・ 夫と二人暮らしの健康な主婦(72歳)につき,年齢相応の家事労働を行っていたとして,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎とし,生活費控除率30%で9年間認めた。
・ 夫を介護する年金受給者につき,主婦としての逸失利益を賃金センサス女性学歴計65歳以上を基礎に7年間,生活費控除率40%で算定し,夫の介護費用として加害者側が支払った分を同逸失利益のうち介護の仕事相応部分を支払ったとみるのが相当とし,その割合を30%とし,事故から夫死亡までの265日分のついて同逸失利益の30%を損益相殺した。
・ 女性(75歳)につき,定期的に透析を受け介護保険身体介護2の認定を受けた夫の世話だけでなく,亡娘の長男は第一種の知的障害の認定を受け意思疎通が不能,常時介護が必要であったことから,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎に7年間,生活費控除率30%を認めた。
・ 夫と二人暮らしの女性(75歳)につき,賃金センサス女性学歴計65歳から69歳平均を基礎に7年間認めた。
・ 女性(79歳)につき,大きな病気を患うことはなく,認知症の夫と同居して炊事,洗濯及び買い物等の家事に従事し,認知症患者の夫を介護して,夫が経営する店を代わりに経営するなどしており,さらに,子らのためにも食事を用意するなどして,家事に従事していたことを認め,賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎とした。
・ 夫と同居する主婦(79歳)につき,監査役として事故前年に240万円の給与収入を得ていたほか,家事全般に従事していたとして,賃金センサス女性学歴計70歳以上平均を基礎に,生活費控除率30%で6年間認めた。
・ 女性(80歳)につき,単身で生活していたが,日中は長女の自宅に赴き家事に従事していたとして,賃金センサス女性学歴計65歳以上平均の30%を基礎とした。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。