【コラム】:素因減額(1)

2026-10-30

 素因減額とは,被害者がもともと有していた事情(素因)が影響して損害を拡大させた場合に,その影響の程度に応じて賠償金額を減額することです。
 素因は,一般的に,被害者の精神的傾向である「心因的要因」と,既往の疾患や身体的特徴などの「体質的・身体的素因」とに分類されています。
 減額の割合は,具体的事案毎に個別に判断されているのが現状です。

1.心因的要因
 (最高裁判例 減額肯定例)
 ・ 事故により頭頚部軟部組織に損傷が生じ外傷性頚部症候群の症状を発した後,10年以上の入通院を継続した被害者につき,事故後3年を経過した日までに生じた損害についてのみ相当因果関係があるとしたうえで,被害者の特異な性格,被害者の言動に誘発された一面もある初診医の常識はずれの診断とこれに対する過剰な反応,本件事故前の受傷及び損害賠償請求の経験,加害者の態度への不満等の心理的要因によって賠償性神経症を引き起こし,被害者の回復への自発的意欲の欠如等があいまって適切さを欠く治療を継続させた結果,症状の悪化と固定化を招いたと考えられるとし,このような事情のもとでは,「3年間にわたって生じた損害の全てを被告らに負担させることは公平の理念に照らし相当ではない。すなわち,右損害は本件事故のみによって通常発生する程度,範囲を超えているものということができ,かつ,その損害の拡大に被害者の心因的要因が寄与していることが明らかであるから,損害賠償の額を定めるに当たっては,民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して,その損害の拡大に寄与した被害者の右事情を斟酌することができる」と4割の限度に減額した。

 (下級審裁判例 損害の拡大がないとしたもの)
 ・ 両膝打撲傷,頚椎捻挫,頭部外傷等で約1年2か月半の治療後に,身体表現性障害(非器質性精神障害)による頭痛,目眩,嘔気等(14級)の有職主婦につき,身体表現性障害の原因はストレスなどの心理社会的要因が関係しているといわれており事故以外の要因が影響している可能性もあるが,それはあくまでも可能性にとどまる上,身体表現性障害の程度は14級にとどまり本件事故によって通常発生する程度,範囲を超えていないとして減額を否定した。

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 弁護士法人しまかぜ法律事務所は,素因減額の可能性のある事案についても事故との関連を精査し,適正な賠償額で解決していますので,ぜひ,一度ご相談ください。

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