【コラム】:慰謝料(38)

2024-10-18

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

5 慰謝料の増額事由
(1)加害者に故意もしくは重過失(無免許,ひき逃げ,酒酔い,著しいスピード違反,ことさらに信号無視,薬物等の影響により正常な運転ができない状態で運転等)または著しく不誠実な態度等がある場合
  ① 死亡事例
ア 一家の支柱
 ・ 会社代表取締役(61歳)につき,加害者が忘年会で飲酒後酩酊しながら自動車で帰宅する途中,高速道を一般道と錯覚して転回して逆走するという常軌を逸した運転行為により事故を発生させたこと,事故後残された被害者の病弱な妻が自殺を図ったこと,謝罪意思の表明の在り方等において加害者に配慮の欠けた面があったこと等を考慮し,3600万円を認めた。
・ 被害者(54歳)につき,加害者が酒酔い運転で車両を対向車線に進入させたため事故が生じたこと,事故後携帯電話をかけたり煙草を吸ったりするだけで救助活動を一切しなかったこと,捜査段階で自らの罪を逃れるため被害者がセンターラインを先にオーバーしてきたと供述したこと等を考慮し,本人分2600万円,妻500万円,母500万円の合計3600万円を認めた。
・ 運輸会社ドライバー(32歳)につき,運転者の恒常的長時間過重労働状態による居眠り運転で加害タンクローリーが渋滞停車中の車列に追突し,死者3名負傷者6名という甚大な被害が出たこと,加害会社代表者らが居眠りでないように事故原因を偽るよう指示していたこと,原告となっていない被害者の父母が自賠責保険から支払いを受けていることなどを考慮し,本人分2800万円,妻500万円,子2人各100万円の合計3500万円を認めた。
・ 自営業(56歳)と専業主婦(56歳)の夫婦につき,両名が同時に死亡したこと,加害者が長時間にわたり飲酒を続け,高度の酩酊状態で高速走行し中央線を突破して対面自動車に正面衝突した事故であること,加害車両同乗者(共同不法行為者)は,運転者の刑事裁判では運転者の関与を相当程度認めたのに自身の刑事裁判では運転者の刑事裁判と一転して不合理な弁解に終始したこと等から,本人分3200万円,子4人各400万円の合計8000万円を認めた。
・ 会社員(30歳)につき,加害者は無免許飲酒運転であった上,逃走し,約2.9kmにもわたり故意に引きずり死亡させたという殺人罪にも該当する極めて悪質かつ残酷なものであること,引きずられながら絶命した被害者の苦痛苦悶は筆舌に尽くしがたいこと,30歳にして妻,子を残して突然命を奪われた無念さを考慮し,本人分3500万円,妻子各250万円の合計4000万円を認めた。
・ 会社員(33歳)につき,加害者が車上荒らしが発覚してパトカーに追跡されたことから逃れようとして時速約80kmで反対車線を走行したこと,事故後被害者を救護していないこと,被害者が念願の結婚式を挙げたばかりであったこと等を考慮し,本人分3200万円,妻400万円,父母各250万円の合計4100万円を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,5年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 後遺症は1つ等級が上がるだけで大きく賠償額が変わります。適正な等級認定を獲得するには,できるだけ早い段階から情報を入手して,準備を進めることが大切になります。
 後遺症申請の認定実績が多数あり,適正な後遺症慰謝料での解決している,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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