【コラム】:慰謝料(35)

2024-09-27

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

4 損害算定困難等を慰謝料で斟酌した事例
(3)逸失利益の算定が困難または不可能な場合
  ① 労働能力喪失が認められないとされた事例
   ア 外貌醜状等
(オ)自賠責法上の後遺障害に至らないか該当しない事例
・ 会社員(固定時20歳)につき,自賠責基準に達しない顔面の線状痕を残し逸失利益を請求しなかったが,傷害分130万円とは別途,慰謝料200万円を認めた。
・ 看護専門学校生(事故時29歳,歯牙障害14級)につき,顔面の線状痕2か所はいずれも単独では12級14号の基準には達しないがほぼこれに近い大きさを有し,特に上唇瘢痕拘縮が顔面のほぼ中央部の位置にあることから,逸失利益を請求しなかったが,結婚相手を探す上で全く影響がないとは言い切れないとして200万円を認めた。
・ 太平洋路線航空機内通訳業務に就く契約社員につき,上口唇部の隆起等が残存し,逸失利益を請求しなかったが,傷害慰謝料51万円とは別途,慰謝料100万円を認めた。
・ 被害者(10歳)につき,下肢の手のひらの大きさに至らない醜状痕のため逸失利益は否定されたが,慰謝料150万円を認めた。
・ 女児(事故時5歳)につき,前額部瘢痕(前額部左側に約3cm四方の軽度の隆起と1.7cmの瘢痕,前頭部やや左寄りに幅約0.6cm長さ14.3cmの線状瘢痕)は,逸失利益を請求しなかったが,自賠責12級14号程度とみるには疑問はあるが,年頃になればその存在を気にするであろうこと,頭蓋骨に穴が開き生涯にわたし頭内部に金属板が存在することを考慮し,傷害分150万円,後遺障害分200万円を認めた。
・ 洋服デザイン販売会社経営兼ファッションモデルにつっき,鼻根部の直径1.5cm大の外傷後色素沈着,毛細血管拡張性の症状は後遺障害等級に該当する程度に至らないとして逸失利益を否定したうえで,日常生活や精神面における影響は無視できないこと,モデルという容貌が殊更重視される職業で仕事を受けられなくなり本件事故後廃業したこと,明確には算定できないが逸失利益も否定できないことなどから,傷害分,後遺障害分200万円を認めた。
・ 中学生(固定時15歳,高次脳機能障害9級)につき,67歳まで35%の労働能力喪失を認めたうえで,額の上の生え際から1cmのところに4cmの線状痕の醜状が残ったことも考慮して750万円を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,5年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 後遺症は1つ等級が上がるだけで大きく賠償額が変わります。適正な等級認定を獲得するには,できるだけ早い段階から情報を入手して,準備を進めることが大切になります。
 後遺症申請の認定実績が多数あり,適正な後遺症慰謝料での解決している,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

Copyright(c) 2021 弁護士法人しまかぜ法律事務所 All Rights Reserved.