【コラム】:消極損害その3 死亡逸失利益(26)

2023-10-13

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その3 死亡による逸失利益
8.扶養利益喪失等
 ・ 政府が自賠法72条に基づき,死亡被害者の内縁の配偶者にその扶養利益の喪失に相当する額を支払い,その損害をてん補したときは,右てん補は相続人にてん補すべき死亡被害者の逸失利益の額から控除すべきであるとした。
 ・ 内縁の夫の死亡事故について,内縁の夫の相続人(先妻との間の子)が受領した死亡損害賠償金のうち逸失利益の3分の2が内縁の妻の扶養利益分を侵害し,不当利得に当たるとして,内縁の妻から相続人に対する不当利得返還請求を認めた。
 ・ 10年以上にわたり内縁関係にある妻につき,被扶養利益喪失による損害として,内縁の夫の死亡逸失利益の50%を認めた。
 ・ スキューバダイビングのインストラクター(男・31歳)につき,離婚した妻との間に法定相続人となる長女がいるが,事故当時,被害者は母と同居して月額5万円程度の生活費を渡していたことから,母の喪失した被扶養利益を月額5万円とし,母の平均余命まで30年間分を母固有の損害と認め,長女の相続すべき被害者の逸失利益から控除した。
 ・ 相続放棄した被害者(男・54歳・会社役員)の同居の妻及び別居の実母につき,被害者が妻に自宅マンションの家賃及び生活費を交付していたこと,被害者の自宅近くに呼び寄せた実母の家賃のうち少なくとも4万円ないし5万円程度を負担していたことなどを考慮し,扶養逸失利益として,妻につき被害者の40%,実母につき15%を認めた。
 ・ 被害者(男・63歳)と約29年にわたりほぼ住居を同一として生活し内縁関係にあった女性につき,重婚的内縁関係は保護に値しないとの反論を,遅くとも同人が被害者と同居を始めた頃には,被害者と配偶者との間で夫婦としての関係が継続していたとは窺われず,婚姻関係が実質上破綻していたものとして退けた。被害者は,事故当時,収入からマンションの家賃,水道光熱費を負担し,生活費を女性に渡していたこと,マンションは被害者の本拠でもあり,また,女性に渡された生活費は被害者の生活のためにも費消されていること等から,被扶養利益を月額6万円とし,扶養請求権侵害として,被害者の平均余命の2分の1である10年間認めた。
 ・ 被害者(女・61歳)と約28年間同居し内縁関係にあった男性につき,法律上の配偶者と事実上の離婚状態にあったとはいえないとの反論を,被害者と同居後別居状態が継続していた等から退けた。被害者は,家事に従事するとともに和菓子屋でアルバイトをし,男性は自らの年金とともに被害者のアルバイト収入で生活していたこと等から,被扶養利益として賃金センサス女性学歴計60歳から64歳平均を基礎に,生活費控除率30%,平均余命の半分の13年間として算定した額の3分の1を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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