【コラム】:消極損害その2 後遺障害逸失利益(1)

2021-10-15

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その2 後遺症による逸失利益(1)
 逸失利益とは,交通事故に遭わなければ得られるはずであった収入など,交通事故によって失われた利益のことです。
 後遺症が後遺症が認定された場合,労働能力が低下して収入が減少するであろうと考えられ,以下の計算式で算定した逸失利益が請求できます。逸失利益の算定は,労働能力の低下の程度,収入の変化,将来の昇進・転職・失業等の不利益の可能性,日常生活上の不便等を考慮して行います。

<後遺症逸失利益の計算式>
 逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間によるライプニッツ係数

(1)基礎収入
逸失利益算定の基礎となる収入は,原則として事故前の現実収入ですが,将来,現実収入額以上の収入を得られる立証があれば,その金額を基礎収入とします。
なお,現実収入額が賃金センサスの平均賃金を下回っていても,将来,平均賃金程度の収入を得られる蓋然性があれば,賃金センサスの平均賃金を基礎収入とすることができます。
家事従事者の方は,賃金センサスの女子全年齢平均賃金(令和元年の統計で388万0100円)で算定します。
(2)労働能力喪失率
   後遺症の等級に応じた労働能力喪失率が定められており,これが基準となります。もっとも,被害者の職業,年齢,性別,後遺症の部位,程度,事故前後の稼働状況等を総合的に判断しますので,等級以上に労働能力が喪失されている場合は,その基準以上に認定されることがあります。
(3)労働能力喪失期間
① 労働能力喪失期間の始期は,症状固定日です。未就労者の就労の始期は原則18歳としますが,大学卒業を前提とする場合は大学卒業時とします。
② 労働能力喪失期間の終期は,原則として67歳です。症状固定時の年齢が67歳をこえる人は,原則として簡易生命表の平均余命の1/2を労働能力喪失期間とします。また,症状固定時から67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の1/2より短くなる人の労働能力喪失期間は,原則として平均余命の1/2とします。
ただし,労働能力喪失期間の終期は,職種,地位,健康状態,能力等により原則と異なる場合があります。
また,事案によっては,期間に応じた喪失率の逓減を認めることもあります。
③ むち打ち症の場合は,12級で10年程度,14級で5年程度に制限する例が多いですが,後遺障害の具体的症状に応じて判断されます。
(4)中間利息控除
労働能力喪失期間の中間利息の控除は,ライプニッツ式を採用しています。
中間利息控除の基準時は,症状固定時とする事例が多いですが,事故時とする裁判例もみられます。
なお,中間利息は,以前は年5%の割合で控除するとされていましたが,現行民法では,控除される利息を損害賠償請求権が生じた時点における法定利率によるとされています。
そのため,令和2年4月1日以降に発生する交通事故の損害賠償請求について,中間利息控除に用いる利率は年5%ではなく年3%となります。
(5)生活費控除の可否
後遺症逸失利益の場合は,死亡逸失利益の場合と異なり,原則,生活費を控除しません。
(6)計算例
※令和2年4月1日以降に発生した事故を想定し,利率は年3%とします。
① 有職者または就労可能者
症状固定時の年齢が50歳で,年収500万円の会社員男性が,後遺症により労働能力が35%低下した場合。
500万円×35/100×13.1661=2340万40675円
  ② 18歳未満の未就労者
10歳の男の子が,後遺症により労働能力が35%低下した場合。症状固定時の賃金センサスの平均賃金は550万円と仮定します。
550万円×35/100×20.1312=3875万2560円

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,2年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
 保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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