【コラム】:消極損害その1 休業損害(7)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害その1 休業損害
4.その他
(1)将来の休業に伴う損害
症状固定時38歳の被害者につき,50歳以上で疼痛がさらに増強したときは人工関節置換術を行う必要があり,同手術により発生すると考えられる損害についても予め請求する必要があるとして,現在の収入を基礎に,通院予定期間6ヶ月分の休業損害を認めた。
(2)事故とは相当因果関係のない原因で症状固定前に死亡した事例
事故の6ヶ月半後に事故とは相当因果関係のない喀血による窒息が原因で死亡した場合に,事故時点において被害者は健康であり,その死亡が近い将来において客観的に予測されていたなどの特段の事情がないとして,事故による骨折の治癒が予測される期間,賃金センサスを基礎に,休業損害を認めた。
(3)間接被害者に関する事例
ア 役員等が受傷した場合の損害
・ 会社役員が傷害を受け,不就労の間も会社が役員報酬を支払った場合に,支払った報酬のうち労務対価部分につき,不就労の割合に応じた分を会社の損害として認めた。
・ 受傷した代表取締役が全額出資して設立し,受傷者本人と取締役であるその妻以外に実際に業務に従事している者がいない空調設備会社につき,受傷者本人が医師から現場作業を禁止された事故後約3ヶ月の間に会社が支出した現場作業の外注費を会社の損害として認めた。
・ 代表者が受傷した航空測量会社につき,事故前年は赤字であるが,技術者が代表者1名,従業員は2名で,航空測量には技術者が必要で技術者抜きでは営業も成り立たないとして,事故による現実の売上の減少があることなどから,代表者の役員報酬減額分の休業損害と別に,会社の休業損害を認めた。
・ 中古住宅をリフォームして販売する会社を一人で営む代表者につき,会社の機関として代替性がなく,会社と経済的に一体をなす関係にあるとして,代表者が事故後約3ヶ月間業務に従事できなかった間に,会社が他の会社に外注し支出した工事費用を会社の損害と認めた。
イ 受傷した被害者の近親者の損害
・ 事故により受傷した被害者の父母につき,その経営する浴場を休業した場合に,確定申告の年収をもとに休業損害を認めた。
・ 事故により死亡した被害者の娘(ツアーコンダクター)につき,英語学校役員に同行して東南アジアの現地関係者を紹介し学校開設交渉を整える等の業務を含む1年間の学校開設援助業務の依頼を受けていたところ,出発予定日の3日前に母が死亡して役員に同行できず契約されたことを事故による損害と認めた。しかしながら,業務が1年間遂行されることがほぼ確実であるとまではいえず,業務計画の頓挫には娘の個人的な体調不良の影響もるということで,半額を損害とした。
・ 事故により死亡した被害者の次女(ジャーナリスト)につき,葬儀等から雑誌記事の休筆や執筆者を後退せざるを得なかった場合に,次女が経営する会社の減収分もその実質は次女個人の損害として評価し得るとし,事故直後の期間(1,2週間)に限って事故と相当因果関係があるとした。
・ 居眠り運転の車両が集団登校中の小学生らに衝突した事例につき,歩合制給与の引越業の会社に勤務していた父親の減収分について,捜査機関の取り調べや刑事裁判への出席は必要であるとして,減収が休業によるものか仕事の減少による出来高低下のためかは明らかではないものの,事故前年からの減収額の8割を認めた。
・ 両親経営の料理店で看板娘として手伝いをしていた女児の死亡事故後,約3.7ヶ月店を休業した両親につき,火災整理のため休業したことがあるから,その全てを事故と相当因果関係があるとは認められないが,両親の悲しみは深く,相応の期間の休業はやむを得なかったとして,死亡日から翌日末まで1.2ヶ月分の固定経費分と店舗の休業補償分を損害と認めた。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,2年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
弁護士法人しまかぜ法律事務所では,近親者の休業損害の請求事例も多数ありますので,適正な賠償額で解決するためにも,ぜひ,ご相談ください。