【コラム】:慰謝料(40)
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
5 慰謝料の増額事由
(1)加害者に故意もしくは重過失(無免許,ひき逃げ,酒酔い,著しいスピード違反,ことさらに信号無視,薬物等の影響により正常な運転ができない状態で運転等)または著しく不誠実な態度等がある場合
① 死亡事例
ウ その他
(ア)独身の男女
・ 大学生(19歳)につき,加害者が一方的かつ重大な過失によって被害者を死亡させたにもかかわらず事故後逃走を続け,逮捕後も完全黙秘し,刑事裁判でも事故は被害者の速度違反によるものであるなどと述べ,被害弁償を全くせず,謝罪の言葉すら述べないこと等を勘案し,3000万円を認めた。
・ 高校生(17歳)につき,加害者が昭和59年ころ免許取消処分を受けて無免許となったまま平成13年2月ころ加害車両を購入し毎日の通勤に使用していたこと,飲酒運転が常態化し本件事故の際も酩酊状態であったこと,同乗者の制止を無視して赤信号無視で交差点に進入したこと,衝突後,頭部から大量の血を流して倒れている被害者に対して「危ないじゃないか」と怒鳴りつけ,持ち上げて揺すり,投げ捨てるように元に戻したこと等から,本人分3000万円,父母各300万円,妹300万円の合計3900万円を認めた。
・ 飲食店勤務(19歳)につき,加害者らの危険運転行為(正面衝突する寸前まで接近して急ハンドルで衝突をかわす行為)により,加害車両と衝突して転倒後,加害車両の底部に巻き込まれたまま約212メートルにわたり引きずられ,後輪に礫過され死亡したもので,通常の死亡事故とは性質を異にするとして,本人分3000万円,父母各300万円,兄150万円の合計3750万円を認めた。
・ 大学生(19歳)につき,加害者が3件の店で飲酒を重ね仮睡の状態で事故を起こしたこと,救護措置を講じなかったこと,飲酒運転が日常的であったこと,被害者の母は事故後抑うつ状態と診断されていること,次兄は本件事故が遠因となって大学を退学したこと等から,本人分2500万円,父母各200万円,兄2人各100万円の合計3100万円を認めた。
・ 会社員(34歳)につき,加害者が被害車両に非常識な割込みをされたと立腹し,報復のために至近距離を保ったまま約400メートルにわたって加害車両で煽り行為を行い,被害者がほぼノーブレーキで先行車へ衝突するという事故を招いたこと等から,3000万円を認めた。
・ 塗装工(35歳)につき,加害者が救護も警察への連絡もせず事故現場から立ち去り,事故発覚を恐れて運行記録チャートを破棄したこと等から,本人分2300万円,母500万円の合計2800万円を認めた。
・ アルバイト(17歳)につき,脇見,飲酒運転,一時停止違反,ひき逃げ等の事情から,本人分2300万円,父母各300万円,姉2人各100万円の合計3100万円を認めた。
・ 大学生(20歳)につき,本件事故は加害者が公道において無免許で無保険無車検のフォークリフトを運転し,右後方を確認しないまま,道路右側に駐車したトラックの影から方向転換してフォーク部分を露出させるという極めて危険な行為により生じたものであること等から,本人分2500万円,父母各250万円の合計3000万円を認めた。
・ 居酒屋勤務(15歳)につき,加害者が酒気を帯びた状態で運転し,パトカーに追尾されながら停止せず,法定速度を大幅に超える速度で進行したこと等から,本人分2500万円,離婚後に親権者となり生計を共通にしていた母500万円,父100万円の合計3100万円を認めた。
・ 会社員(50歳)につき,加害者(19歳)が酒に酔った状態で,制限時速を35~45キロ超過した時速85~95キロで走行し,対向車線に加害車を進入させ被害車両に衝突したこと等から,本人分3200万円,母300万円の合計3500万円を認めた。
・ 高速道路で道路工事の標識車及び側壁に衝突した車両に同乗の会社員(26歳)につき,制限速度(時速60キロメートル)を約68キロ上回る高速(時速128キロメートル)で走行し,約27メートル手前で初めて道路工事の標識車に気付いたもので,速度超過及び前方不注視の程度が著しい危険な運転であること等から,本人分2700万円,両親各150万円の合計3000万円を認めた。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,5年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
後遺症は1つ等級が上がるだけで大きく賠償額が変わります。適正な等級認定を獲得するには,できるだけ早い段階から情報を入手して,準備を進めることが大切になります。
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