【コラム】:慰謝料(30)

2024-08-02

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

4 損害算定困難等を慰謝料で斟酌した事例
(1)積極損害の算定が困難または不可能な場合
・ 水道工事現場監督(固定時34歳,右股関節脱臼骨折による右下肢短縮,股関節機能障害等8級)につき,将来股関節の人工関節置換手術が必要であるが,時期・費用が不明で,手術により失われる労働能力の程度も判然としないため損害額を算定することが不可能なので慰謝料で考慮するとし,本来の後遺障害分700万円のほかに800万円の慰謝料を認めた。
・ 板金士(固定時36歳,右脛骨の変形癒合12級,右第4指DIP関節機能障害14級,右前腕回外制限等14級の併合12級)につき,傷害分300万円,後遺障害分270万円のほか,将来の抜釘術に伴う損害は独立の損害項目として認められないが,抜釘術に伴う危険や各種の損害が発生する可能性があるとして,130万円を認めた。
・ 保険会社パート社員(固定時41歳,RSDによる左上肢を中心とした機能障害,疼痛,知覚障害等7級)につき,症状固定後も通院しアロディニアによる疼痛緩和のため手袋を着用する必要があるが,治療行為としての必要性,通院の回数,買換の回数,価格,使用頻度等に不確定的な要素が多いことから慰謝料として斟酌し,障害分120万円,後遺障害分1500万円を認めた。
・ 飲食店アルバイト(固定時23歳)につき,外傷性大動脈損傷の傷害を負い胸部下行大動脈人工血管置換術を受けており,将来,再手術の可能性もあるが,現時点では異常所見や身体の不調が認められず,後遺障害が残ったとは認められないが,合併症を予防するために就労生活及び日常生活に制約を受けている事情,合併症が生じる頻度,合併症が生じた場合の治療方法,事故前後の就労及び収入の状況などを考慮して,慰謝料1000万円を認めた。
・ アルバイト(固定時29歳,右俣関節機能障害12級,右下肢感覚障害12級,併合11級)につき,将来的に大腿骨骨頭壊死等を生じ人工関節手術が必要になる可能性があり,定期的に通院して診察等を受ける必要があるほか,仮に手術が必要になった場合には相応の費用を要するなど不安を抱えての生活を余儀なくされているとし,傷害分200万,後遺障害分520万円を認めた。

(2)休業損害の算定が困難または不可能な場合
・ 照明器具デザイナー(年齢不詳)につき,左膝可動域制限,歩行等各種動作に支障があり,等級非該当ではあるが14級に準じる神経症状が残ったこと,休業損害は認められないがギブス固定や松葉杖を使用しながらの就業に相当の苦労が伴ったであろうこと,テニスをすることができなくなったことなどを考慮し,傷害分102万円,後遺障害分100万円を認めた。
・ 左第一中手骨骨折,骨盤骨折等の傷害を負った理容師につき,症状固定後の休業損害を認め難いものの,症状固定から一定期間左手母指のしびれ等(等級非該当)が仕事の能率に影響し減収につながった可能性は否定できないことを増額理由として,38日入院,通院期間130日(実日数91日)の傷害分165万円を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,4年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 後遺症は1つ等級が上がるだけで大きく賠償額が変わります。適正な等級認定を獲得するには,できるだけ早い段階から情報を入手して,準備を進めることが大切になります。
 後遺症申請の認定実績が多数あり,適正な後遺症慰謝料での解決している,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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