Archive for the ‘コラム’ Category

【コラム】:バス,タクシー乗車中の事故について

2016-02-22

バス乗車中の事故が,最近たびたび報道されていますが,バスやタクシーに乗車中に事故被害にあった場合,①誰に,②どの割合で請求できるかについて,説明させていただきます。

①誰に請求できるか(賠償義務者について)
賠償義務者としては,バス(タクシー)側としては,その運転手,バス(タクシー)会社,その保険会社が考えられます。
また,バス(タクシー)の単独事故ではなく,相手方車両がいる場合は,相手方車両の運転手,その保険会社が考えられます。

バス(タクシー)の運転手は,加害事故を起こした本人として,民法709条に基づき賠償責任を負います。
バス(タクシー)会社は,加害車両の保有者であって,運行業を行い,また従業員が業務中に事故を発生させたのであるから,自賠法3条,民法715条,商法590条に基づき賠償責任を負います。
そして,バス(タクシー)が保険加入していた場合,保険会社も賠償責任を負います。

一方,相手方車両の運転手は,加害事故を起こした本人として,民法709条に基づき賠償義務を負います。
そして,相手方が保険加入していた場合,保険会社も賠償責任を負います。

②どの割合で請求できるか
バス(タクシー)に乗車中の被害者は,先ほどの賠償義務者の誰に対しても,全額の請求を行うことが可能です。全額を支払った賠償義務者は,もう一方の賠償義務者から回収を行います(賠償義務者同士の話しになります)。
バス(タクシー)の単独事故ではなく,相手方車両がいる場合は,それぞれの過失行為が合わさって被害者の受傷が生じています。これを共同不法行為といいますが,この場合は,不真正連帯債務といって,バス(タクシー)側も,相手方側も,被害者に対しては全額の賠償義務を負うことになります。

しまかぜ法律事務所は,バスやタクシー乗車中の事故についても,多くの実績があります。
適正な賠償義務者に対して,適正な賠償額で解決を行いますので,バスやタクシー乗車中に被害に遭われた方は,ぜひ,しまかぜ法律事務所にお問い合わせください。

【コラム】:年間約10件の死亡事故を受任しています

2016-02-08

愛知県では,平成28年1月22日から同月31日までの10日間の交通事故死者数が10人となり,交通死亡事故多発警報が発令されました。
交通死亡事故多発警報は,10日以内に交通事故による死者数が10人以上となったときや,死者数の全国ワースト1位と2位との差が10人以上になったときなどに発令されます。

愛知県では,平成27年に213人もの多数の死亡事故が発生し,全国ワースト1位となっています。

しまかぜ法律事務所では,年間約10件の死亡事故を受任しており,愛知県内で発生した死亡事故の多くにおいて,ご遺族からご依頼をいただいております。
しまかぜ法律事務所には,圧倒的に豊富な死亡事故の実績があり,保険会社の提示額を2~3倍に大幅増額して解決してきました。
精神的・金銭的に辛い思いをしているご遺族を,ご依頼後~解決まで徹底してサポートしていきます。ぜひ,しまかぜ法律事務所にお問い合わせください。

【コラム】:脳脊髄圧減少症の治療が保険適用へ

2016-01-24

厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会は,平成28年1月20日,来年度から脳脊髄圧減少症のブラッドパッチを保険適用することを承認しました。

交通事故の被害者の中には,立っていると頭痛がひどくなり,横になると頭痛が楽になる症状(起立性頭痛)を訴える方がいらっしゃいます。
交通事故の衝撃で髄液が漏れると,頭痛やめまいの症状が現れます。横になると髄液漏れが少なくなって痛みが収まるのです。この症状を,脳脊髄圧減少症といいます。
むち打ちと診断されている方の中には,少なからず脳脊髄圧減少症の方がいらっしゃいます。

脳脊髄圧減少症の治療としては,ブラッドパッチといって,血液を頭の硬膜の外側に注入して髄液漏れを止める方法があります。
ブラッドパッチは,脳脊髄圧減少症の治療には効果的ですが,この治療費を保険会社に請求をしても拒絶されます。日本全国で,治療費を請求する裁判がなされていますが,治療費が認定されることはほとんどありません。
これまでブラッドパッチは,保険適用されないため,被害者が高額な治療費を自己負担するしかありませんでした。この高額な治療費を保険会社に請求しても,前述のとおり拒絶されていました。
そのため,ブラッドパッチが保険適用されて被害者の治療費負担が減ることは,非常に明るいニュースとなりました。

当事務所には,脳脊髄圧減少症でお困りの方から多数の相談があります。
脳脊髄圧減少症の多くの場合,後遺症申請において14級が認定されています。ブラッドパッチで治ってしまえば,後遺症は認定されませんので,当事務所では,ブラッドパッチを受ける前に後遺症申請を行って後遺症を獲得し,保険会社と示談後に,被害者ご自身でブラッドパッチを受けるか否かの判断をしてもらいます。
当事務所にご依頼いただく時点で,すでにブラッドパッチを受けていた依頼者もいらっしゃいますが,十分な効果が出なかったとして後遺症申請を行い後遺症を獲得した上で示談した事案もございます。

ブラッドパッチが保険適用された後も,後遺症を獲得して示談後に,ブラッドパッチを受けるか否かを判断してもらうという当事務所の方針には変更はありません。
脳脊髄圧減少症でお困りの方は,脳脊髄圧減少症にも多数の実績がある,しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

【コラム】:バス転落事故の損害賠償請求について

2016-01-17

平成28年1月15日,長野県軽井沢町でスキー場に向かうバスが崖から転落して15人(うち12人が乗客)が死亡する悲惨な事故が発生しました。
若く未来ある多数の命が失われました。ご逝去を悼み,謹んでお悔やみ申し上げます。

この大事故のように,バスやタクシーなど,運送車両に乗車中に事故被害に遭うことは少なくありません。
そこで,バスやタクシーなど,運行車両に乗車中に死亡事故の被害にあったご遺族が,今後の生活を維持していくためにも,どのようにして適正な金額での損害賠償請求を行うかについて,ご説明させていただきます。

 

①賠償義務者について
損害賠償義務者としては,運転手,バス(タクシー)会社,保険会社が考えられます。
運転手は,加害事故を起こした本人として,民法709条に基づき賠償責任を負います。
バス(タクシー)会社は,加害車両の保有者であって,運行業を行い,また従業員が業務中に事故を発生させたのであるから,自賠法3条,民法715条,商法590条に基づき賠償責任を負います。
そして,バス(タクシー)が保険加入していた場合,保険会社も賠償責任を負います。運転手やバス(タクシー)会社に多額の賠償額を支払う資金力があれば別ですが,実際の支払は,保険会社が行うことになります。

②損害賠償の項目
主に,ⅰ治療費,ⅱ慰謝料,ⅲ死亡逸失利益,ⅳ葬儀関係費が請求できます。
詳しくは「ご家族がお亡くなりになられた方へ」をご覧ください。

ⅱ慰謝料について,弁護士基準(裁判基準)で請求できますが,速度超過などの悪質運転や,長時間運転などの違法な運行管理が常態化したことが原因である場合,さらに増額した請求が可能です。
この事実を確認するために,刑事記録を取り寄せする必要がありますが,刑事裁判に被害者参加することを,おすすめしています。
刑事裁判に被害者参加することで,捜査機関によってどんな刑事記録(証拠)が収集できたかが確認でき,スムーズに刑事記録の取り寄せができます。また,刑事裁判で被害感情を訴えることや事件の真相を知ることにも繋がります。
詳しくは,「被害者参加制度について」をご覧ください。

③具体的な損害賠償額について
多くの場合,保険会社は,自賠責から回収した金額をエスカレーター式にご遺族に支払うだけで済ませようとします(保険会社は自腹を切ろうとしません)。そのため,ご遺族自身で交渉する多くの場合,自賠責から支払われる保険金≒保険会社の提示額となります。

具体的に,「22歳」「大学生」「両親あり」「未婚」の方がお亡くなりになって,「葬儀関係費用150万円を要した場合」について,ⅰ自賠責基準,ⅱ弁護士基準(裁判基準)で賠償額を計算してみます。

ⅰ自賠責基準
⑴(自賠責基準の)葬儀関係費
葬儀費用,仏壇,墓碑の購入費用などです。
60万円です。ただし,請求書,領収書などで60万円を超えることが証明できる場合は,上限100万円が支払われます。
したがって,具体的案件の場合,100万円です。
⑵(自賠責基準の)慰謝料
慰謝料には,㈠被害者本人の慰謝料,㈡ご遺族の慰謝料があります。
㈠被害者本人の慰謝料
350万円です。
㈡ご遺族の慰謝料
被害者の父母,配偶者,子供の人数で異なります。
1人で550万円,2人で650万円,3人以上で750万円です。
なお,被害者に被扶養者がいる場合,さらに200万円が加算されます。
したがって,具体的案件の場合,1000万円です。
⑶(自賠責基準の)死亡逸失利益
生きていれば得られるはずであった収入が失われた損害です。
(自賠責基準の)死亡逸失利益は,次のとおり計算します。
(㈠被害者の年収-㈡被害者の年間生活費)×㈢就労可能年数によるライプニッツ係数
㈠被害者の年収
有職者は,事故前年の年収or年齢別平均給与額(年額)の高い方です。
学生や主婦,無職者は,全年齢平均給与額(年額)です。
㈡被害者の年間生活費
被害者に被扶養者がいる場合は,年収の35%です。
被害者に被扶養者がいない場合は,年収の50%です。
㈢就労可能年数によるライプニッツ係数
就労可能年数は,原則として67歳までの期間です。
ライプニッツ係数は,就労可能年数に応じて決まっています。
したがって,具体的案件の場合,(㈠330万円-㈡165万円)×㈢17.7741=2932万7265円です。
以上より,自賠責の保険金は,合計4032万7265円となります。
自賠責の上限は3000万円ですので,自賠責の保険料は3000万円ですが,保険会社からは,3000万円を超える合計4032万7265円の提示があることが想定されます。

ⅱ弁護士基準(裁判基準)
⑴(弁護士基準の)葬儀関係費用
150万円と認定されることが多いです。
したがって,具体的案件の場合,150万円です。
⑵(弁護士基準の)慰謝料
被害者本人の慰謝料,ご遺族の慰謝料を合計して,一家の大黒柱であれば2800万円,母親・配偶者であれば2400万円,独身者であれば2000万円~2200円と認定されることが多いです。
ただし,速度超過などの悪質運転や,長時間運転などの違法な運行管理が常態化したことが原因である場合,さらに1割程度増額した金額で認定される可能性があります。
したがって,具体的案件で,速度超過などの悪質運転や,長時間運転などの違法な運行管理が常態化したことが原因であることが証明できた場合,2500万円です。
⑶(弁護士基準の)死亡逸失利益
(弁護士基準の)死亡逸失利益は,次のとおり計算します。
㈠基礎収入×(1-㈡生活費控除率)×㈢就労可能年数によるライプニッツ係数
㈠基礎収入
被害者の年収です。大学生の場合は,大卒者の平均給与額となります。
㈡生活費控除率
一家の大黒柱であれば40%,母親・配偶者であれば30%,独身男性であれば50%です。
㈢就労可能年数によるライプニッツ係数
就労可能年数は,原則として67歳までの期間です。
ライプニッツ係数は,就労可能年数に応じて決まっています。
したがって,具体的事案の場合,㈠640万5900円×(1-㈡50%)×㈢17.7741=5692万9553円です。
以上より,弁護士基準の賠償額は,合計8342万9553円となります。

④損害賠償請求の流れ
ⅰ治療費や葬儀関係費の支払交渉

治療費や葬儀関係費の支払いは,直ぐに発生しますので,保険会社に対して,対応するように交渉します。
ⅱ賠償金の一部請求(自賠責への請求)
しまかぜ法律事務所では,事故態様の分析や慰謝料増額のために有利な証拠を収集するためにも,刑事裁判の被害者参加をおすすめしていますが,刑事裁判が終わって刑事記録が取り寄せ可能になるまで,事故から半年ほどかかることも少なくありません。
刑事記録を証拠として最終の示談交渉するのに時間がかかりますので,ご遺族の生活のためにも,保険会社に賠償金の一部請求を行ったり,自賠責に保険金を請求します。
ⅲ最終の示談交渉
刑事裁判への被害者参加の結果,収集した刑事記録を証拠として,適正な過失割合,賠償額で示談交渉を行います。
ⅳ民事裁判
適正な賠償額を示談交渉で解決できることが大半ですが,保険会社の態様が不当な場合は,民事裁判を行います。

 

損害賠償請求の結果,多額の賠償額を獲得することができますが,加害者(保険会社)から支払われる賠償金は,非課税です。

 

死亡事故は,被害の大きさが最たるものです。しまかぜ法律事務所は,精神的・金銭的に辛い思いをしているご遺族を,ご依頼後~解決まで徹底してサポートしていきます。
しまかぜ法律事務所は,死亡事故の実績が豊富で,保険会社が提示額を2~3倍に大幅増額して解決してきました。また,民事だけでなく,刑事も全力でサポートいたします。
死亡事故に実績豊富な,しまかぜ法律事務所に,ぜひ,お問い合わせください。

【コラム】:物損扱いでも治療費の支払いが受けられます

2015-12-13

物損扱いでも治療費の支払いが受けられます初診時に病院でもらった診断書は,警察署に提出して人身扱いにしてもらってください。

しかし,仕事が忙しくて診断書を提出できなかったり,診断書を提出することを忘れてしまった方は少なくないと思います。

では,物損扱いのままでは,保険会社から治療費や慰謝料などの支払いを受けられないのでしょうか。

警察署で診断書を提出すれば人身扱いになり,加害者に対して行政や刑事の処分がなされます。行政処分とは免許停止など,刑事処分とは罰金や懲役などです。

治療費や慰謝料などのは民事の問題であって,行政や刑事とは異なります。

人身扱いでなくても,保険会社から治療費や慰謝料などの支払いを受けることができます。また,後遺障害の認定を受けることも可能です。

もっとも,物損扱いのままで治療費や慰謝料などの支払いを受けるためには,人身事故証明書入手不能理由書を提出する必要があります。そこで,保険会社から人身事故証明書入手不能理由書の提出を求められたら,提出していただいて構いません。

交通事故は何度も経験するものではありません。交通事故の知識がなくて不安な気持ちを抱いている被害者も多数いらっしゃると思います。しまかぜ法律事務所では,法律相談を無料で実施していますので,ご遠慮なくお問い合わせください。

【コラム】:治療の中断について

2015-11-29

海外出張や仕事が忙しいなどが理由で,医療機関が受診できず1ヶ月が空いてしまっていることも少なくないと思います。

治療期間が1ヶ月以上中断してしまった後に医療機関に通院しようとしても,保険会社から中断後の治療費の支払いを拒絶することは少なくありません。
この場合,治療費をどのように請求すれば良いのでしょうか。

まず主治医から,中断後の症状も継続していて事故と関係があることの意見をもらう必要があります。そして,中断したことに理由があることを併せて,治療費の対応を請求します。
それでも保険会社が拒絶を続ける場合は,訴訟で治療費を請求したり,直接自賠責に治療費を請求する方法が考えられます。
しまかぜ法律事務所では,中断後の治療費でお困りの方からの依頼で,中断後の治療費や慰謝料などを回収した実績が豊富にあります。
治療の中断を理由に,保険会社から治療費の対応を拒絶されてお困りの方は,ぜひ,しまかぜ法律事務所にご相談ください。

【コラム】:初診遅れの治療費について

2015-11-23

交通事故から数日後に痛みが生じる方や,忙しくて医療機関に受診できない方は,気づいたときには事故から2週間以上経過していることも少なくないと思います。

この場合,相手方の保険会社に対して,医療機関への受診を希望しても,事故から2週間以上経過している場合は,因果関係なしと治療費の対応を拒絶されることがほとんどです。
また,ご自身が加入している保険会社に人身傷害保険での治療費の対応を希望しても,相手方の保険会社と同様に対応を拒絶されることがほどんどです。

では,治療費をどこに請求すれば良いのでしょうか。
年末年始を挟んで医療機関が休診していたり,忙しくて受診ができないなど,初診遅れに理由がある場合は,直接,自賠責に治療費や慰謝料などを請求する方法が考えられます。
しまかぜ法律事務所では,初診遅れでお困りの方からの依頼で,直接,自賠責から治療費や慰謝料などを回収した実績が豊富にあります。
初診遅れを理由に,保険会社から治療費の対応を拒絶されてお困りの方は,ぜひ,しまかぜ法律事務所にご相談ください。

【コラム】:道路交通法の改正(認知症)

2015-11-01

平成27年10月28日,宮崎市において,認知症の加害者が運転した自動車が暴走し,2人が死亡,4人が重軽傷を負うという重大事故が発生しました。道路を逆走,歩道を走行など,認知症を原因とする交通事故は多発しています。

そこで改正道路交通法では,免許更新時に認知症のおそれがあると判断された人に,医師の診断を義務づけ,認知症と判断された場合,免許が取消しまたは停止されることになりました。

しまかぜ法律事務所では,認知症と思われる加害者が引き起こした交通死亡事故の交渉を行ったこともありますが,このような悲劇が減少するため必要な改正だと思います。

なお,加害者が認知症であれ,飲酒運転であれ,加害者の任意保険は使用できます。認知症や飲酒運転が原因で生じる交通事故では重大な結果を招くことも多いです。
しまかぜ法律事務所では,このような重大事故でお困りの方をサポートし,刑事事件での真相解明,民事事件での適正な賠償金獲得を行っています。ぜひ,しまかぜ法律事務所にご相談ください。

【コラム】:人身傷害保険を利用後に相手方へ請求できるか(裁判基準差額説)

2015-10-25

物損扱いでも治療費の支払いが受けられます被害者やその家族が加入する保険に人身傷害保険が備わっていれば,自分側の保険会社から,治療費や慰謝料などの補償を受けることができます。

まず,どのような場面で人身傷害保険を利用すべきでしょうか。

人身傷害保険は,被害者の過失割合に関わらず約款で定められた補償額が支払われるというメリットがありますが,弁護士基準と比べて低額というデメリットがありますので,通常の場面では利用する必要はありません。

人身傷害保険を利用するのは,加害者が保険に加入していない場合や,こちらにも過失が大きい場合など限定的な場面でのみです。

では,人身傷害保険で定額(かつ低額)の補償を受けた後,相手方へ請求できるでしょうか。

被害者に過失がある場合でも,人身傷害保険を利用するときは過失割合にかかわらず定額の補償がされますが,利用後に相手方に請求するときは過失相殺されます。

そこで,過失相殺されても相手方の請求額が,人身傷害の補償額を上回れば,相手方に請求することができます。
上回るかどうかを判断するためには,どのように過失相殺されるかを知る必要があります。

すなわち,①過失相殺分は,被害者の請求側で考慮されるのか(絶対説),②人身傷害保険側で考慮されるのか(裁判(訴訟)基準差額説)という問題です。人身傷害保険を利用した場合,自分側の保険会社も補償額の範囲で相手方に請求していくことになるため(求償),どのような考えが適正かについて長く争われてきました。

話しが難しいので,具体例を挙げて説明します。
(弁護士基準での損害が総額1000万円,人身傷害保険での補償額が500万円,過失割合が20:80の場合)

 

①絶対説

被害者は,人身傷害保険で補償を受けた差額分(1000万円-500万円=500万円)を請求したいところですが,過失相殺分(1000万円×0.2=200万円)は,被害者の請求側で考慮されるため,被害者が請求できる金額は,300万円となります。(500万円-200万円)。
一方,人身傷害保険から相手方への請求(求償)は500万円です。

 

②裁判(訴訟)基準差額説

過失相殺分(1000万円×0.2=200万円)は,人身傷害保険側で考慮されるので,人身傷害保険から相手方への請求(求償)は300万円になります(500万円-200万円=300万円)。
一方,被害者の請求できる金額は,500万円です。

この問題については,最高裁判所が,②裁判(訴訟)基準差額説を採用するに至りました(最判平成24年2月20日判時2145号103頁)。人身傷害保険とは,そもそも過失の有無にかかわらず保険契約者に補償する制度であるため,過失相殺分は人身傷害分で先に考慮すべきという考えです。

したがって,②裁判(訴訟)基準差額説でもって,過失相殺分を考慮し,過失相殺されて相手方に対する請求額が想定される場合には,人身傷害保険を利用した後でも相手方へ請求可能です。

 

しまかぜ法律事務所では,裁判(訴訟)基準差額説で請求して解決に至った多数の実績があります。人身傷害利用後の賠償額についても無料診断も行っています。人身傷害保険利用後の相手方への請求でお困りの方は,ぜひ,しまかぜ法律事務所にお問い合わせください。

人身傷害保険

【コラム】:健康保険を利用できるか,利用すべきか

2015-10-19

交通事故で治療を受けるときに,健康保険を利用すべきか否か,相談を受けることがあります。
そこで,①交通事故で健康保険を利用できるか,②どのような場合に健康保険を利用すべきかについて,説明させていただきます。

 

①交通事故で健康保険を利用できるか
交通事故は原則として自由診療ですので健康保険を利用する必要はありません。しかし,健康保険組合に第三者行為手続きをすることで健康保険を利用することができます。これは,健康保険組合が第三者(交通事故の相手方)に立替負担した治療費を求償するために必要な手続きです。
例えば,保険料を納める被保険者が,自らの責任で風邪を引いたとしても,保険料を納めてもらっている代わりに健康保険組合は治療費の7割を負担します(被保険者の窓口負担が3割の場合)。しかし,第三者(交通事故の相手方)という加害者がいる交通事故の場合,健康保険組合が7割を負担する必要はありません。健康保険組合は,一時的に7割を立替負担しますが,この立替負担分を第三者(交通事故の相手方)に請求していきます(求償)。この求償手続きのために第三者行為手続きが必要なのです。
第三者行為手続きは,難しい手続きではありませんが手間はかかります。そこで,しまかぜ法律事務所では,健康保険を利用する場合,依頼者に代わって第三者行為手続きを行っています。

ただし,すべての場合で健康保険が利用できるわけではありません。仕事中や通勤中など労災の適用場面では健康保険は利用できませんのでご注意ください。

 

②どのような場合に健康保険を利用すべきか
ⅰこちらにもある程度の過失がある場合は,健康保険を利用すべきです。
健康保険を利用すると,自由診療と比較して,治療単価が安くなります。同じ治療を受けても,健康保険を利用する方が治療費が安いのです。
保険会社は,医療機関には過失にかかわらず満額の治療費を支払いますが,最終的に慰謝料を支払う段階で,過失分の治療費が過払いになっているとして慰謝料から差し引いてきます。被害者の手取りを多くするには,治療費の過払分として差し引かれる額を安くしなかえればなりません。すなわち健康保険を利用して治療費を安く抑えるべきです。
もっとも,こちらの過失がさほど無い場合は,健康保険を利用する必要はないと思います。なぜなら,自由診療でしか対応できない治療内容もありますし,医療機関には治療費を多く支払ってくれる患者の方が丁寧に対応というところも少なからず存在するからです。
ⅱ治療費が問題になるケースでも,健康保険を利用すべきです。
治療費があまりに高額になるケースでは治療費が争点になることがあります。このような争点を回避するためにも健康保険を利用することは有効な手段です。

 

しまかぜ法律事務所では,どのような場合に健康保険を利用すべきか個別事案に応じてアドバイスをすることが可能です。ぜひ,しまかぜ法律事務所にご相談ください。

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