【コラム】:物損(17)

2025-07-18

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,車の修理代金や代車使用料などの物損もあります。
 なお,自賠責保険は人身事故のみ対象としており,物損事故による損害は対象外となるため,物損事故による損害は,加害者または加害者が加入している保険会社に請求することになります。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

5.評価損
(2)所有権留保車両,リース車両等の場合(2)
・ 事故前にリース契約解約を申し入れていた普通乗用自動車(事故前査定:計算時入庫価格(評価損)237万7000円,解約清算金98万0837円。事故後査定:計算時入庫価格190万2000円,解約清算金142万3307円)につき,リース契約者が,事故後,解約清算金を支払い,同清算金の増額の形で全て負担し評価損を請求できるとした上で,リース会社の事故前後の被害者の評価額の査定下落分はリース契約に由来する事情のため客観的な価値の下落ではない等として,被害者の損傷状況と修理費(49万6845円),初度登録から事故までの期間(約1年半),走行距離(1万6598km),車種等に鑑み,評価損につき修理費4割の19万8738円が相当とした。
・ 所有権留保車両の所有者から使用者に対する評価損に係る損害賠償請求権の債権譲渡は,使用者が当該車両の使用利益を有し,ローン完済時に所有権も取得することから,訴訟信託に当たるとはいえないとして,使用者が当該車両の評価損を請求できると認めるのが相当であるとした。
・ リース期間5年の残価設定型のリース契約により使用するハイエース(初度登録後7か月,2万4331km)の評価損につき,リース期間がなお残存(口頭弁論終結時点で約3年2か月)すること,リース期間満了時の評価損の額は不明であることなどから,リース期間満了時の残存価格との差額を負担することによる損害は口頭弁論終結時にいまだ現実化していないとして否定した。
・ 事故後リース契約を解約した国産高級自動車(登録後11か月,走行距離2万0500km以下)につき,車両の状態や損傷の程度及び修理の内容に照らし,リース損害金をリース会社に対し支払っていることから民法422条を類推適用して,修理費の3割である69万3644円を評価損として認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,6年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 物損事故の場合,被害者の加入している車両保険を使用して解決する方もいらっしゃいますが,等級が下がり翌年からの掛け金が高くなります。被害車両の損害状況や過失割合によっては車両保険の使用をお勧めすることもありますが,弁護士費用特約を使用し,弁護士が加害者と交渉することで,適正な賠償額を回収することができます。弁護士費用特約は使用しても等級が変わらず,翌年からの保険料も変わりません。
 弁護士法人しまかぜ法律事務所は物損の解決実績も多くありますので,車両保険を使用して高くなった保険料を払うか,弁護士費用特約を使用して保険料が変わらずに解決できるか,ぜひ,一度ご相談ください。

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