【コラム】:物損(15)

2025-06-27

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,車の修理代金や代車使用料などの物損もあります。
 なお,自賠責保険は人身事故のみ対象としており,物損事故による損害は対象外となるため,物損事故による損害は,加害者または加害者が加入している保険会社に請求することになります。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

5.評価損
(1)評価損の算定例
② 外国車(2)
   ・ 1966年製メルセデスベンツ250SEカブリオレにつき,一部フレーム修正が計上されていること,部品の経年劣化(製造後48年)が考えられ,鈑金修理による通常以上の強度低下のおそれがあること,美観等が重視されるクラシックカーであり,修復歴の影響が軽視できないこと,代理店が職人の手作業によるフレーム修正の可能性について指摘していること等から,修理費約430万円の約7割相当である300万円の評価損を認めた。
・ クライスター・ジープラングラーサハラ(初年度登録半年弱,走行距離約4000km)につき,限定車両として販売された車両であること,本件事故による損傷がリヤフレームクロスメンバーという車体の骨格部分に及んでいること,下取価格が40万3000円差し引かれていること等から,修理費約43万円の約6割相当である25万円の評価損を認めた。
・ 輸入クラシックカー(昭和42年製のマセラティ・ミストラル 平成7年9月に輸入され初年度登録)につき,全塗装は否定しつつ,損傷は骨格部分に及んでいないが,部分塗装では非損傷部との差が目立ち価格の大幅減損の蓋然性が高いこと等から,修理費の5割218万円余を認めた。

③ 事業車
・ 塵芥車(初年度登録後約2年)につき,機能上又は構造上の障害が残存しているとはいえないものの,現にシャーシフレームが曲損し修正がされていること,架装物(ボデー)の載せ替えをした修理業者からフレーム修正が原因で発生した架装物の故障に対する一切の補償はない旨の書面が差し出されていること,ボデー部分が精密機械であること,塵芥車とはいえ売買されることがないとはいえないこと等から,取引上の評価損が生じないとはいえないとして,修理費の約1割である42万6000円の評価損を認めた。
・ 初年度登録2年目の大型貨物車の評価損について,原告の車両の初年度登録の時期,走行距離に加え,原告車両が新車価格(税抜)で1236万6000円の車両であることを総合考慮すれば,修理によってもなお減価が生じるとして,修理費の約20%の109万円を認めた。
・ 大型貨物自動車(粉粒体運搬車,初年度登録後3か月,走行距離3万2099km)につき,フレーム等の骨格部分に損傷が生じたことを踏まえると,修理によって賄えない評価損が生じたと認められるとして,車両の特殊性及びその特殊性からくる車両市場の流動性に照らし,修理費用の15%である62万3855円の評価損を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,6年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 物損事故の場合,被害者の加入している車両保険を使用して解決する方もいらっしゃいますが,等級が下がり翌年からの掛け金が高くなります。被害車両の損害状況や過失割合によっては車両保険の使用をお勧めすることもありますが,弁護士費用特約を使用し,弁護士が加害者と交渉することで,適正な賠償額を回収することができます。弁護士費用特約は使用しても等級が変わらず,翌年からの保険料も変わりません。
 弁護士法人しまかぜ法律事務所は物損の解決実績も多くありますので,車両保険を使用して高くなった保険料を払うか,弁護士費用特約を使用して保険料が変わらずに解決できるか,ぜひ,一度ご相談ください。

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