【コラム】:物損(3)

2025-03-07

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,車の修理代金や代車使用料などの物損もあります。
 なお,自賠責保険は人身事故のみ対象としており,物損事故による損害は対象外となるため,物損事故による損害は,加害者または加害者が加入している保険会社に請求することになります。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

2.経済的全損の判断(1)
修理費が,車両時価額(消費税相当額を含む)に買替諸費用を加えた金額を上回る場合には経済的全損となり,買替差額が認められます。下回る場合には,修理費が認められます。
 ・ 物損による被害は,被害物件を修理する以外に同種のものを入手することができないような特別な事情がない限り,被害物件の価値を限度と解すべきものであり,被害者が愛着を持っていた車であるからといって,その価値を上回る修理費を損害と認めることができないとした。
 ・ 同種同年型式の車両は少なくとも1044万円以上はする中古観光バスにつき,観光バスとして業務に使用し,営業の用に供するためには特別の塗装,内装,設備等を要するとして,中古車価格の1.2倍程度の修理費全額である1250万0590円を車両の損害と認めた。
 ・ 1980年製の並行輸入車フェラーリにつき,事故直前の購入時の契約書などの書証が提出されず,事故時の時価は明らかにならないものの,フェラーリは製造後長期間経過したものであっても,カーマニアの間では憧れのスポーツカーとして相当な価値を有しているとし,経済的に修理不能であるとは認められないとして,修理見積費用14万7000円を含め修理費319万3069円を認めた。
 ・ 修理費の額と比較すべき車両全損を前提とする評価損は,車両時価額のみに限定すべき理由はなく,これに全損を前提とした場合に損害と認められるべき車検費用,車両購入諸費用等を含めた額とすべきであり,修理費の額がこれらの合計額を下回る場合は,経済的全損と判断することはできないとした。
 ・ 初年度登録から11年目の乗用車(車種不明)につき,時価額は新車価格の1割の26万円,修理費は39万8870円であるが,経済的全損とすると自動車税,登録費用,納車整備費用等の買替費用合計11万4615円が必要となるので,修理費が経済的全損とする場合を著しく上回るとはいえず,修理費用相当額をもって損害とした。
 ・ 初年度登録後12年以上が経過したトヨタ・スープラにつき,約8か月前に70万円で購入したこと,中古車市場における同種車両と対比して,走行距離も3万kmと極端に少ないことから,日本自動車査定協会の「中古車価格ガイドブック」による24万5000円程度にとどまるとの被告の主張を排斥し,時価は修理費57万2250円を下回ることはないとして,修理費の賠償を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,6年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 物損事故の場合,被害者の加入している車両保険を使用して解決する方もいらっしゃいますが,等級が下がり翌年からの掛け金が高くなります。被害車両の損害状況や過失割合によっては車両保険の使用をお勧めすることもありますが,弁護士費用特約を使用し,弁護士が加害者と交渉することで,適正な賠償額を回収することができます。弁護士費用特約は使用しても等級が変わらず,翌年からの保険料も変わりません。
 弁護士法人しまかぜ法律事務所は物損の解決実績も多くありますので,車両保険を使用して高くなった保険料を払うか,弁護士費用特約を使用して保険料が変わらずに解決できるか,ぜひ,一度ご相談ください。

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