【コラム】:慰謝料(32)

2024-08-30

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

4 損害算定困難等を慰謝料で斟酌した事例
(3)逸失利益の算定が困難または不可能な場合
  ① 労働能力喪失が認められないとされた事例
   ア 外貌醜状等
(イ)9級の事例
・ 会社員(固定時37歳,顔面醜状9級)につき,外貌醜状について逸失利益を認めないことを考慮し,900万円認めた。
・ アルバイト(固定時33歳,顔面醜状9級)につき,外貌醜状による逸失利益を認めないことを考慮し,後遺障害分830万円を認めた。
・ 小学生(事故時7歳,右前額部の線状痕9級)につき,逸失利益は認めなかったが,線状痕の部位及び程度からすれば,髪形の制限を受けること自体が精神的負担となりえ,具体的に労働能力への影響の蓋然性は認められないものの将来選択できる職業に一定程度の制約が生じることが否定できない等として,後遺障害分870万円を認めた。
・ 会社員(固定時22歳,顔面醜状9級,歯牙障害12級の併合8級)につき,後遺障害逸失利益を認めないことを考慮し1030万円認めた。
・ 事故時少なくとも28年以上の社会人経験のあるバス運転手(前頭部に長さ55ミリの線状痕9級)につき,逸失利益を認めないことを考慮して840万円を認めた。

(ウ)12級の事例
・ クラブママ(事故時41歳,顔面醜状12級,頭痛等14級の併合12級)につき,外貌醜状について逸失利益を認めないこと,患部にガラス片が残存していること等から950万円を認めた。
・ 被害者(固定時17歳,骨盤骨変形12級,外貌醜状12級の併合11級)につき,逸失利益は骨盤骨の変形障害による14%喪失としたうえで,550万円を認めた。
・ 接客業も行う会社員(固定時39歳,右下肢の機能障害11級,右下肢の醜状障害12級の併合10級相当)につき,労働能力喪失率を24%としたうえで,逸失利益の算定上必ずしも十分に反映されない醜状障害等から600万円を認めた。
・ 男児(5歳,顔面3箇所の線状痕12級)につき,具体的な線状痕が明らかでなく,将来唇のラインを整える手術をする予定があり,線状痕が改善されることも予想され,将来の労働労力に影響を与えると認めることはできないが,後遺障害の存在及び影響については慰謝料で斟酌するとして,傷害分72万円,後遺障害分440万円を認めた。
・ トラック運転手(固定時45歳,右頬部と右白唇の線状痕及びオトガイ部の瘢痕12級)につき,現時点で具体的な減収はないものの,抽象的な将来の減収の可能性があること,本件事故がいわゆるひき逃げであることなどから,逸失利益は否定したが,後遺障害分600万円を認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,5年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 後遺症は1つ等級が上がるだけで大きく賠償額が変わります。適正な等級認定を獲得するには,できるだけ早い段階から情報を入手して,準備を進めることが大切になります。
 後遺症申請の認定実績が多数あり,適正な後遺症慰謝料での解決している,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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