【コラム】:慰謝料(31)

2024-08-23

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

4 損害算定困難等を慰謝料で斟酌した事例
(3)逸失利益の算定が困難または不可能な場合
  ① 労働能力喪失が認められないとされた事例
   ア 外貌醜状等
(ア)7級の事例
・ 専業主婦(30歳,顔面醜状7級)につき,家事能力が本件後遺症によって現実に低下したとは認められないと逸失利益を否定したが,これを斟酌して1200万円を認めた。
・ ホテル勤務(22歳,額全面の点状瘢痕等7級)につき,顔面醜状のためモデルになることを諦めたこと,前額部の醜状痕が肌の調子により浮き出た際,同僚からどうしたのかと聞かれて辛い思いをしていること,左上腕部の瘢痕を気にして半袖等の着用は控えていること,減収がないため逸失利益を認定しないこと等に鑑み,傷害分130万円,後遺障害分1450万円を認めた。
・ 被害者(女・固定時12歳,顔面に4本の線状痕7級)につき,逸失利益を労働能力喪失率25%として認めたうえで,後遺障害の内容・程度,女子の外貌醜状の場合は労働能力喪失が必ずしも逸失利益に反映されないこと等を考慮して,傷害分110万円,後遺障害分1350万円を認めた。
・ 主婦(事故時44歳,顔面醜状7級,左膝関節機能障害8級,左大腿部醜状14級,採骨による骨盤変形12級の併合5級)につき,治療期間約3年の傷害分600万円,顔面醜状は考慮しないで労働能力喪失率を60%としたことから,後遺障害分1700万円を認めた。
・ 症状固定の1年10か月後から看護師として就労した看護専門学校生(固定時28歳,顔面醜状7級,左足関節の可動域制限非該当,左足醜状痕非該当)につき,左足関節可動域制限について症状固定から5年間10%,その後5年間5%の逸失利益を認めたうえで,患者と間近で接しながら仕事することが多く,また手術帽をかぶることにより前額部の線状痕が露出すること,看護師という比較的足に負担のかかる職業に就いていること,左足醜状痕により相当の精神的苦痛を受けていること等から1220万円を認めた。
・ 有職主婦(固定時33歳,高次脳機能障害7級,外貌醜状障害7級,上下肢露出部醜状障害14級の併合5級)につき,歩行中に抱いていた娘は死亡し,自身も高次脳機能障害及び女性にとっては日常生活上,社会生活上大きな制約となる醜状が残ったほか,事故原因が酒気帯び運転による居眠りであるとして,傷害分295万円のほか,労働能力喪失率を60%とした上で,後遺障害分1600万円を認めた。
・ 女学生(事故時19歳,顔面部の線状痕7級,歯牙障害12級の併合6級)につき,コミュニケーション能力に相当な支障が生じており,性別及び年齢等を考慮して,67歳まで労働能力喪失率25%(10級弱)の1945万円余を認めた上,後遺障害慰謝料1189万円を認め,後遺障害の内容,程度,性別及び年齢等を考慮して,更に100万円の慰謝料を加算した。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,5年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 後遺症は1つ等級が上がるだけで大きく賠償額が変わります。適正な等級認定を獲得するには,できるだけ早い段階から情報を入手して,準備を進めることが大切になります。
 後遺症申請の認定実績が多数あり,適正な後遺症慰謝料での解決している,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。

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